とても真面目に目標を持って取り組まれていらしたんですね。プロレス道の確立までに、どんな厳しさがありましたか? プロレスの新人は10名入門しても8名辞めます。育てるというより残るものだけ残す。そのために試されるのはリングでの試合ではなく、スクワット1000回!腹筋1000回!といったシゴキ。毎日毎日そんな練習で、誰か脱落して辞めない限り終わらないわけです。私語も交わせない生活で、唯一気持ちを吐露できるのはシャワーの時間。ある日「おれ、辞めるわ」と口火を切ったのがいて、すると待っていたかのように、「俺も、俺も」…と続く声が上がった。中学卒業したばかりの15歳は荷物をまとめて甲子園を目指すと言って故郷へ帰りました。 厳しい世界ですが、そんな中で生き残るには何が必要でしたか? 俺は小さい頃から何事も長続きしないで飽きっぽかった。周りからもそう見られているとわかっていたので、それに対する反発もあった。先はまったく見えないけれどプロレスでそれを克服したいと思った。プロレス歴31年になりますが、体はあちこち傷だらけでボロボロ。それでも好きなことは続けるんだ!という気持ちがあったからこそです。 今の子どもたちのワルさ、昔と比べて質が違うように感じます。蝶野さんは「本当の強さ」って何だとお感じになりますか? 質は、昔も今もさほど変わっていないと思う。そういう世界に入ったら実力のないものはゴミのように扱われる。リーダーはチームに入れるやつかどうかを見極める立場。ふさわしくなければ境界線を作る時もあるし、善悪の識別もする。率先して弱いものイジメするようなリーダーは、リーダーとは呼べない。俺らの頃はヒーローがいたけれど、今ってシンボル的なリーダーが不在なんじゃないかな。 蝶野さんのご家庭での教育方針は? とにかく好きなことをやるべき、ということ。誰かをいじめたりするのは絶対ダメ。いじめられている人を助ける人でありなさいと伝えています。体の大きい長男は今、小学2年生。サッカーと柔道を習っています。子どもの人間関係は最終的に自分自身で解決すべきことだけど、親はタイミングを見計らって子どもの話を聞いてあげたい。ドイツ人の家内は、俺の考えとはまた違うけれど(笑)。家内の通訳を兼ねて、学校行事にも必ず行きます。「あ!蝶野だ!」と子どもたちに声を掛けられますよ。 ---ありがとうございました! <了> 蝶野正洋さん 書籍情報
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