志村さんはもう成人された方もおられますが4人のお子さんを育ててこられて。子育てで大切にされてきたことってどんなことですか? 一番大切にしてきたのは、親が勝手に子どもの行き先を決めないことです。20歳で授かったのは男の子でしたが、男の子ってみんな『わんぱくでもいい、逞しく育ってほしい…』という、あのCMイメージしかなかったんです。でもね、長男って外遊びが大嫌いな子でした。息子を連れて公園に行っても遊ばない。私だけが公園で遊ぶような感じ。他の子どもたちには慕われて猿山の大将みたい。息子を探すといつも一人離れていたんですね。息子の側に近寄るとポケットからハンカチ出して「ママ、こんなに汚れちゃって」って拭いてくれるような子でした。その彼が、一番夢中になってキラキラしている時間は、幼児番組を見て数字や文字を書き写している時でした。遊びなさい!って言っていましたが、親の思いこみっていけないですね。それで、私が勝手に思い込んでいる枠の中にはめ込もうとしていたな…と反省したんです。 子どもとはいえ一人ひとり好きなことが違うものですよね。その後はどんな接し方を? 幼稚園の時からは認識を改めて、親は子どもが好きなことをサポートすることしかできないって思ったんです。子どもの特性を春夏秋冬に分けるとしたら、母親って皆「はきはき自分の意見が言えて、行動力があって、明るくリーダーシップが取れる夏タイプの子」とか言うと思うんです。でもそんな子ばっかりだったら世の中大変なことになってしまう。秋も冬も春もあってこその社会。自分の子がどのタイプなのか?と考えるところから始めないと。我が家の4人長男、長女、次女、次男といますが、みんな季節は違いました。 今、子育て中のお母さんにどんなメッセージを伝えたいですか? 以前、たくさんの親子にアンケートをしたことがありました。子どもたちには「どんなお母さんが好き?」と聞くと「お母さんでも失敗しても間違ってもいいよ。ニコニコにしているお母さんが好き」というような答えが断トツ多数。大人の失敗を認めているのです。お母さんにも同様の質問をしたところ、それはそれは大量なリクエストが書きこまれていて……「リーダーシップが取れて、はきはき自分の意見が言えて、すすんでお手伝いができて、素直で思いやりがあって」……こんな調子。この違い、わかりますか?子どもはどんな親でも大好きなのです。赤ちゃんを見ていれば分かるけれど、親のことをずっと目で追っている。親が子どもを見ている以上に子どもは親を求め、そして無条件で親を愛している。初めて親になった時、私はこれに報いるために、親ができるのは、親も条件をつけず子どもに向き合い、そして子どもが必要としているものを引き算しながら与えることと決めました。(※著書「ママ・マインド」P120~に詳しく掲載されています)これは子どもの教育に携わる人へも同じように伝えています。 『引き算しながら与える』って素敵な言葉ですね。あれもこれも…っていうのではなく、その子としっかり対峙して何が本当に必要かを考えることですね。では、今の子どもたちが、どんな大人になってほしいと願っていますか? 今の子ども達の多くは大人から守られて育っています。危険なことはしません。チャレンジする喜びも人と関わる喜びも知らない。先日、ダイアログ・イン・ザ・ダークを神戸で開催し、小学4年生の子どもたちに参加してもらいました。その感想の中に「何が一番楽しかったかって、絶対にできないと思っていたことを、やってみればできるんだって分かったこと!それも仲間と一緒に!」という言葉が印象的でした。そういう体験をサポートしていきたいです。暗闇で人と手をつなぎ協力すること。目を使わずにするその体験は五感を研ぎ澄まし、人という存在の温かさを実感することになるのですから。 ---ありがとうございました! <了> ●志村季世恵さん活動情報
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