■ピアノは私たちが子ども時代よりも比較的どの家庭でも手に入れやすくなったと思いますが、それに伴ってピアノを弾く子が増えているかといえばそうでもありませんね。現代の子どもたちが抱えている問題はどんなことだと感じますか?
例えばゲームは前頭葉だけが興奮状態に陥る遊びですが、楽器を弾くというのは、脳の広い帯域を使う全脳運動です。それは動物に触れるのと同じように心を癒したり美しいものを構築する能力です。楽器演奏では自分との闘いはあっても他人との競争、勝負事はない。音楽で感情を育てるような教育にしたいですね。私が見てきたさまざまな国の中で、共産圏の東欧がとてもおもしろい試みをしていました。「アフタヌーンスクール」と呼ばれ、昼過ぎから学校内で習い事をさせ、すべて無料なのです。ピアノを弾く子、絵を習う子、体操をする子、色々な授業があったようです。貧しい国でさえそうやって子どもたちの能力を伸ばそうと予算を取っている。この国は、少子化といって格差社会も進んでいますが、子どもたちの力を育てる教育カリキュラムは未だに国としては発展途上ではないでしょうか。
■なるほど。子どもの能力を伸ばす環境が用意されているのは幸せですね。では、著書「クラシックを聴くと良い子に育つ」で、一番強調したい点は何ですか?
小さな頃から音楽を楽しんできた人は人間的な豊かさをもてると思います。楽器をたしなむ人は罪を犯さないと信じています。例えば、「音痴」って生まれつきのものではないんです。耳でたくさん心地よい音を感じることは、とても大切なこと。心地よい音に触れる機会が少ないと、心のバランスも崩れてしまいます。赤ちゃんの頃から、心地よい音に触れることがどれだけ良い影響があるかを書いています。大人になってからでもクラシックを取り入れることはとても心を豊かにすることです。
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