ところでスグモ先生は虫の図鑑が好きでしたか?習い事は何をされていました? 図鑑で文字を覚えたくらい舐めるように読んでいましたね。3つ上に兄がいますが、最初は兄にくっついて虫捕りに行っていました。でも虫捕りだけしていたわけではない。習い事は、幼稚園から中1まで10年ピアノ。小学校6年間はサッカー。水泳は小1~3、4年までの3~4年間やっていました。うちは両親とも理系で、父は工学系のシステムエンジニア。母は好奇心旺盛で虫も好きで、かなりおもしろがって一緒にアゲハの幼虫を飼ったりして。僕らが家を巣立ってからも育てているようなので本当に好きなのだと思います。母親が虫に抵抗がなかったのは僕にとっては幸いでした。お母さんが虫に抵抗あると、子どもが虫好きを貫くのが稀有なことになるので、母の影響は大きい。 なるほど!お母さんの存在は大きいですね。では今回出版された図鑑のこだわりを教えてください。 たくさんありますが一つ目は、生きているクモを撮っていることです。クモの標本はアルコール漬けで、色がどんどん抜けてしまうので、生きている姿からかなりかけ離れてしまう。もしくは二酸化炭素のガスで10秒20秒麻酔をかけられますが、糸の切れた操り人形のようになってしまう。だから基本、捕獲したものを生きて動いているままA4サイズのプラスチックの板の上に放してカメラを構え撮影しました。103種類すべてそのように撮影しましたので、もう一度同じことをやるのはちょっと…無理ですね(笑)。 まぁ、気が遠くなるような努力を!(笑)実寸サイズもページの端っこに載せてありますのでそれぞれ違うのがリアルに伝わります。 クモは脱皮をしながら成長します。図鑑に載せているのは特徴がハッキリしている親。汚れたり毛がはげたりしていない親を載せるために、あと一回脱皮したら親になるクモをわざと捕ってきて飼って脱皮させ、新品のきれいな親を用意し、さらにそれを一番かっこよく見える体型にするため餌をあげて多少太らせたりしました。ですから103種類すべて飼ったということです(笑)。種類にもよりますが親になるまで大体3か月から1年くらい掛かります。撮影後は標本にしました。 こだわりの二つ目は、見つけた場所からクモの種類がわかるように、場所別に候補をチェックでき、さらにそれぞれの種類の解説ページには「似ているのはどれで、どこで区別できるのか」を明記しました。これにより、名前を調べたい時にできるだけ正解にたどり着けるものを目指しました。これ案外ほかの図鑑ではやっていないので。 最後に、自然に触れることやサマーキャンプなど子どもの習い事を考える親へ何かメッセージをお願いします。 わざわざ休日に「自然に浸りに行くぞ」と気合を入れなくても、その気になれば近くでいくらでも自然を感じることができます。僕の勤務する慶應義塾幼稚舎も都会にありながら300種類以上の虫が生息しています。自然はどこか遠くにあるものではなく、自分とつながっているもの。自分にとっての新発見はいくらでもある。まず、身近なところに目を向けてほしい。 親が一生懸命にやらせようとしても主役は子ども。やりなさいと言われたことに答えるだけの子はクリエイティブではなくなります。安全を与え過ぎないのが一番ではないでしょうか。 ---ありがとうございました! <了> 須黒 達巳 書籍紹介
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