物事を自分の視点で捉えて、迎合しない姿勢は当時からでしたか!平野さんは中学生の頃、何か書いたりされていましたか? 当時は、自分の考えていることを書き留めておきたいと思ってノートに書いたり、日記みたいなものをつけたり…これは続きませんでしたが、ちょこちょこ書き始めていました。小説ではなくて、思ったことの断片を。学校での作文は得意で、大体何か賞をもらっていました。それも振り返ってみれば…で、意識していたことではなくて。ただ、その頃はまだ小説を書きたいとかではなく、ぼんやり文系だと思っていましたが、何になりたいか?したいことがなかった。母方の家系は皆医者や歯医者なので、理系に進んだらどうか?と勧められましたが、僕はどうしてもその仕事に関心がもてなかった。ただ具体的に何になりたいかわからなかった。小説家になってからも何度かそうした主題で書きましたが、当時は悩みの種でした。 幼少期の習い事は、何をされていらっしゃいましたか? 僕は自分からしたいことはなかったのですが、母がいろいろ習わせるのが好きでしたのでピアノ、スイミング、書道、剣道…など。通っていた保育園と同じ建物にピアノ教室があって、そこに小学校の途中まで通っていました。あまりうまくなりませんでしたが、楽譜は読めるようになって中学生になって自分でもう一度練習。やっていた時はあまり好きじゃなくて「男の子がピアノ習っている!」と言われるような田舎でしたから、スイミングスクールのバッグに楽譜を忍ばせてこっそり通っていました。姉は熱心に練習してベートーベンやショパンを弾いていました。僕が中学1年の時、姉は大学2年。喧嘩にもならなかったし、姉の友人にも可愛がってもらえて、文学ではなく音楽については影響が大きかったですね。音楽はアイデンティーに関わっています。登場人物を考える上でも、音楽を聴く人間かどうか?聴くならばどんな音楽か?など考えます。 今、平野さんが注目していること。これから小説のテーマにもなりそうなことは何でしょう? テクノロジーの進歩は、すごく関心があります。この10年位で社会をものすごく変えると思う。このあたり都内でも、昼ご飯の注文はタブレットに替わり、コンビニも無人レジの導入やタクシーやバスの自動運転も実証実験が少しずつ始まっている。そうした単純労働だけでなく、アメリカでは医学の分野でレントゲンから診断するのはAIのほうが人間よりも成績が上になった、という話がニュースになってました。画像診断はパターン解析だからAIが得意なんでしょう。そういう世の中で、自分もそうですが、子どもたちがどんな仕事をしていったらいいか、というのはかなり気になります。弁護士の相談や、医者の問診も、AIに仕事が部分的に代替される時代が来ると言われています。将来を担う子どもにどんな力をつけさせたらいいか、実質的に考えないとなりません。 お父さんの立場として、子どもを育てるうえで大切にしていることを教えてください。 あまり小さい時に詰め込んでも意味がないと思っています。僕は田舎で育って、放課後はランドセル玄関に放り出して外でずっとザリガニ捕ったりして遊んでいたので、ほったらかしておかれたことがすごくよかった。東京の都心で暮らしていると、初等教育にクレイジーになってしまいがちなので、なるべくそこに巻き込まれないように伸び伸びさせたいと思っています。お膳立てして準備し過ぎると創造性が育たない気がします。 ---ありがとうございました! 2018年11月取材・文/マザール あべみちこ |
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