日本の小学校も2校通われましたが、ナージャさんが日本っておもしろいと思われたのはどんなことでした? みんなが出場する運動会です。ロシアはうまい人しか出られませんでした。スポーツも劇も合唱も一握りのうまい人が出て、他の人は観る側。日本は誰でも出られるし、チームワークもあるのでクオリティーが高いですね。体育でも鉄棒、球技、ダンスといろんなことを授業で学べるし、音楽も笛やピアニカなどいろんな楽器ができる。家庭科では裁縫からお料理まで。他の国なら多くの場合、個人で習い事に通わないと学べないようなことを日本は学校でできるのがすごいと思いました。 そうなんですね!ナージャさんはクリエイティブの仕事をされていますが、この職業を選択されたのはどうして? でも一番は、企画をするのがとても好きだったからです。これはカナダで中学時代を送ったことがベースにあります。カナダの私の学校では発表する、何かを創る、文章で表現する…といったアクティブラーニングな授業が多かったんです。例えば、自分が好きな生き物について発表する時、みんなにも好きになってほしいから伝え方を工夫するようになって。それって新しい勉強法だと思いました。私はどうしても語学に不利があったので学校のいわゆる勉強はあまり自信がなかったのですが、ここで与えられた課題をどう自分なりに解決するのか、どう弱点を強みにどう工夫して活かせるかの訓練ができました。今の仕事は、そこからの延長です。世の中の課題を解決するために言葉をつくったり、企画を考えたり。そういうことがとても好きなのです。 ナージャさんが取り組まれている「こんなのどうだろう研究所」について教えてください。 アクティブラーニングには正解がないし、いろんなやり方があると思っています。私は転校体験に基づいて 、他のメンバーはそれぞれのやり方で「こんなのどうだろう?」と世の中になげかけています。私は教育専門家ではないけれど、研究所での活動を通じて視点を変えられたり、子どもたちの発想などが少し解放されるきっかけになるといいなと。他の国の良い点を持ってくるのももちろんいいですが、日本の教育の良さを再発見して、そこからオリジナルの進化を生み出せたらと思っています。例えば、教室で言えば、日本の教室の座席は、他国に比べて自由にレイアウトしやすい。いろんな学び方のカタチを子どもたちと試しながら反応をみて、彼らがワクワクしながら学べるヒントが見つかったらと思っています。 自分の捉え方を伝えられるようにするって大事ですよね。では最後に、習い事を考える親世代へ何かメッセージをお願いします。 私がロシアにいた頃は、たくさん習い事をしていて、バレエ、バイオリン、水泳、英会話に通っていました。英会話は歌やゼスチャーで表現する小さな子が楽しめる内容でしたが、バレエとバイオリン、水泳はなかなか本気モードでした(笑)。怒られて号泣しながら踊る日もあったバレリーナの入門編のようなバレエレッスン。分数やイタリア語も習って先生とマンツーマンでバイオリニストを目指すレッスン。でも、どれも熱意のある先生から教えてもらえるのが何よりも楽しかったです。大人というのは情熱をもって好きなことをやっている人のことだ、と思いました。海外に行ってからは語学が不要なスポーツを中心に空手、テニス、バスケットボールなども通いました。習い事の先生に恵まれていたからかもしれませんが、教え手がもつ「想い」を知るのが楽しい。熱意に触れるところから違う視点で興味も湧きます。ある意味ちょっとした疑似転校気分かもしれませんね(笑)。 いろんなことができるチャンスが日本の学校にはあって、可能性を拡げるためには良い環境だと思います。転校してリセットしながら過ごしてきた私にとって、一か所で過ごしたらどうなるか?というのが逆に気になりますね(笑)。 ---ありがとうございました! 2019年2月取材・文/マザール あべみちこ キリーロバ・ナージャ 書籍紹介
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