キリーロバ・ナージャ コピーライター/クリエイティブディレクター。ソ連(当時)レニングラード生まれ。数学者の父と物理学者の母の転勤とともに、6カ国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)の各国の地元校で教育を受けた。電通に入社後、様々な広告を企画、世界の広告賞を総ナメにし、2015年の世界コピーライターランキング1位に。その背景にあった世界の様々でアクティブな教育のことを、コラムとして連載し、キッズデザイン賞を受賞。「アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」設立。好きなものはゾウと冒険。 「ナージャの5つのがっこう」で描かれている世界5か国の小学校の違いは、大人が読んでもそうだったのか!という気づきが得られます。どんなきっかけで絵本にされたのですか? 小学校1年生以降、半年から1年ごとに転校していたので、私にとって「転校」は特殊というよりむしろ普通のことでした。ある日、偶然自分の体験を話す機会があって、みなさんとても興味津々に聞いてくださって、初めて「これって面白いことなのか!」と気づきました。考えてみると、最先端で教育比較を研究している先生はいらっしゃいますが、実際に毎年違う国の学校を体験した方ってあまりいないんじゃないかなって。それと、ひとつの学校にしか通ったことがないと、まさか全然違う学校があるとは気づきづらいし、もし、今の学び方が合っていないなら、他の選択肢があることもわからない。自分の体験を伝えることで誰かの刺激やキッカケになるんじゃないかと思ったんです。 今、教育界ではアクティブラーニングという言葉をよく聞きます。ナージャさんの体験がまさにそれかな?と思いますがいかがですか。 一般的にアクティブラーニングは、「主体的な学び」、「対話的な学び」、「深い学び」のことですね。私はさらに、多様な人と答えがない問題に取り組むのも大事なポイントだと思っています。それってまさに私が各国で体験していたことかも!とちょうどタイミングもつながって、数年前、社のwebメディアで連載コラムを執筆し始めました。いろんな切り口で、例えば「筆記用具がペンの国と鉛筆の国があるのはなんで?」など小学生時代を思い出しながら15回の連載を書きました。それをみた出版社の編集の方から子ども向けにもこの話を伝えてほしいと絵本の依頼がありました。いろんな学び方や学校があることを知れば子どもたちの今後の学びが変わるかもしれないと思い、「喜んで!」と即答しました。 絵本の前にコラムがあったわけですね!それもぜひ読んでみたい。国の教育の違いでわかりやすい例はありますか? 私が体験したことだと例えば、水泳教室です。旧ソ連の時に水泳を習い始めましたが、学校にはもちろん街にも数か所しかプールはなくて。プールの底が暗めな色で5歳の私にとっては水深もわからず最初少し怖かったです。ロシアは主にスピードを競います。先生が「サメがいるぞー!」というと皆信じてしまうので死に物狂いで泳ぐ(笑)。1年くらい習って、まあまあクロールで速く泳げるようになりました。それで日本へ転校してスイミングクラブへ自信満々で行ったら、形が全然ダメと指摘を受けまして。形、水しぶきの量、息継ぎはこっちからする…など泳ぐのに細かいルールがあることを初めて知りました。速く泳げても日本では基礎や形が大事なのだと気づいたんです。 すっごくわかる。おもしろいですね!日本は皆が同じスタイルになれるように形を重視するのかも。他の国はいかがでした? 日本の次にアメリカに行って、またスイミングスクールに通いました。もうスピードも形もマスターしているから大丈夫!と自信満々で行ったら…。アメリカではまずプールで浮いてみて、と言われて。浮いてみたら、「まぁできたけれど、何かあったらあなたたぶん助からないよね…」と。そこではスピードや形よりも、いかに水の中でサバイブするかが大事で、横泳ぎをマスターしてからふつうの泳ぎを練習。その後、カナダでも水泳を習いましたが、これまでよく辞めなかったね!とまわりから言われるほど、各国の私が通った水泳教室はやり方が異なっていて面白かったです。 |
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