本田 秀夫(ほんだ ひでお) 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授 精神科医師。医学博士。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。1991年より横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。その後、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長などを経て、2014年より現職。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症協会理事、日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本発達障害学会評議員。2013年刊の『自閉症スペクトラム』(SBクリエイティブ)は5万部超のロングセラー。発達障害の早期発見、早期介入から成人期の支援まで、あらゆるライフステージにわたる臨床経験をもつ発達障害の専門家。知的障害を伴わない自閉症が稀ならず存在することを世界で初めて実証した疫学調査は国際的にも評価を受けている。現在は、大学を拠点として児童青年精神科医の育成と臨床研究体制の整備に取り組んでいる。 » 本田 秀夫 詳しくはこちら 先生の著書を読ませていただいて「おや?これは私のことかも?」と思う点が多々ありました(笑)。 「発達障害」と「あなたの隣の発達障害」の2冊をセットで読んでもらうといいと思います。前者はご本人向け、後者は周囲にいる家族や学校関係者に向けて書いたものです。発達障害とは古くは知的障害とか自閉症などかなり重い障害を指していた。本人はなかなかコミュニケーションが取れず、言葉もうまく話せない場合がありますので、周りの人からは『問題を起こす人』として捉えられていた。ここ30年くらいで発達障害の概念がすごく広がった。コミュニケーションができない人ばかりではなく、発信できるようなコミュニケーション力がある人もいる。他人から見ての定義だけだったのが、当事者からみるとこう考えているんですよ、というのが当事者の手記などから少しずつわかってきた。この2冊は、外側からみた発達障害ではなく、当事者側からみた発達障害の本なのです。ですから、これらを読んでピンとくる親和性が高い人は多いかもしれません。 好きなことが極めて特化する、ちょっと変わった子が昔はクラスに何人かいたように思います。オールマイティではない人は、発達障害の概念に触れますか? 誰でも好き嫌いや得意不得意、向き不向きがあってオールマイティな人はいませんが、その好き嫌いの凸凹加減が多数派だと共感しやすい。学校の授業を聞いているだけで理解できる人は7~8割いる一方で、2~3割の人にとっては簡単すぎるか難しすぎるか興味が持てないかで外れてしまう。今の社会は7~8割の人が楽しく生活できるような社会構造になっていて、特に日本のように全体主義的な雰囲気が強い国だと、合わないと思っても合わせるものでしょ!という暗黙の了解が起こりやすい。発達障害の人にとって居心地の悪い国だと思いますね。几帳面で勤勉を良しとする文化があるので、ちゃらんぽらんでうっかりミスの多い人もあぶり出されやすいのです。 親が我が子に対して「もしかしたら・・・」と思い当たる点があった場合どのようにすればよろしいでしょうか? 子どもが何歳になったらこういうことをしましょう…的な子育てマニュアルは一切信用するなと伝えたい。あれは平均的なスピードで成長する人に合わせて作られているものです。平均はあくまでも平均。本当はバラツキがある。ああいうマニュアルができている背景には発達心理学によって「何歳でこれができる子が多い」という知識が増えてきたことがあります。でも、「何歳でこれができます」というのを子育ての基準にしてはいけない。あくまでも統計ですから。それを守ろうとして躍起になる必要はない。気にすることはないけれど、あまりにも外れている場合は特別な支援や配慮を求めていい。気にしながら一人で抱え込むことはありません。 学校というカテゴリーでは多数派ではないと、浮きますよね?その違いは本人感じているものですか? 発達障害の子は、自分向けではない社会であることを日夜感じ続けています。例えていうなら、度の合わないメガネをかけたままでずっと集団生活をさせられるような状態です。そういう意味では、発達障害は多民族国家の中では比較的過ごしやすいです。みんながそれぞれ違うから、違いをわかっても受け入れやすい。日本はアメリカやカナダなどのような多民族国家とは違い、特定の民族が圧倒的に多い国なので、違うものを差別したがるのです。 |
|