子どもの頃、大人になってからなりたい職業はありましたか? 何か明確になりたいものがあったわけではなく、漠然と人と違うことをしたいと思っていました。学校では体育が好きな科目。担任の先生は音楽専攻ではなかったのですがリコーダーが好きな先生で、大好きな先生と遊びたくて一生懸命にリコーダーを練習したものです。また、音楽の先生も素敵な方で、「アマリリス」という歌を練習するときに、本物の「アマリリス」の鉢植えを育てて見せてくれました。歌って終わりでなく「アマリリス」の花の可憐さを体感させてくれました。 そういう授業は想像力豊かになりますね。体を動かすのがお好きで中学では剣道を? 中学で剣道部に所属したのは「今、剣道をしなかったら私の人生でこの先触れ合うことはない」と思ったからです。日本的作法のスポーツですし、やってみたらおもしろいかもしれないと。高校は地元の進学校に進み、最初は吹奏楽部に入部を考えました。仲良しの幼馴染がその学校の吹奏楽部で、一緒にいたくて彼女が演奏していた楽器トロンボーンを希望したところ、人気があって私は担当できず。一緒に活動できないならば…と安直ですが邦楽部に切り変えました(笑)。邦楽部では、箏も少し弾きましたが、尺八が入ることによって部としても曲のレパートリーが広がるので尺八を吹くことが多くなりました。父は内心嬉しかったかもしれませんね。 高校卒業後は藝大へ進学されますが、すごい競争率を超えて入学をなさったのでは?藝大でたくさんの出会いがありましたか? 邦楽科全体で定員25名で、私が入学した年の尺八専攻は3名でした。尺八には二流派あり、箏も二流派あります。そして能楽、日本舞踊などいろいろな専攻があり、ピアノやヴァイオリンに比べると楽器人口自体少ないです。それまで尺八を演奏している人との交流は父の友人しかいなかったのですが、藝大に入学してたくさん友達ができて、若い世代の音楽家や芸術家と初めて触れ合う機会ができて楽しかったですし、一緒に学べるのがうれしかったです。 藝大で尺八を専攻される方は、やはりご家庭に楽器があったのでしょうか。 尺八専攻の人は経歴がバラバラな人が多く、ある日ラジオで聴いて衝撃を受けて始めた人や、大学のサークルで尺八サークルがあってそこで興味をもって藝大に入り直した人もいます。ピアノやヴァイオリンを始めるきっかけと比べると、かなりきっかけは少ないですがプロの尺八奏者のお子さんや、尺八の音色に感動して専攻を決められた方もおられました。家庭の中に楽器があったのはとても大きなきっかけで、私も父が尺八を演奏していなかったら、確実に自分も尺八を選択していなかったと思います。尺八に出会わせてくれた父に感謝しています。 |
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