3.11のあった10年前に沖縄・石垣島へ移住されましたね。 最初から移住しようと思っていたわけでなく、春休みだけ少し東北を離れようと。友人がいたので行ったのですが小学生男子にとっては天国みたいないい所で、本当に子どもがイキイキしていた。東京や仙台の都会の子育てで足りないなぁと一生懸命に補っていたものが、そこには全部あった。 自然の中で遊ぶこと。子ども同士で遊ぶこと。地域社会全体で子どもを見ること。母一人子一人なので、いろんな大人や子どもと接することを心がけていましたが、なかなか都会では努力しないとならなくて。石垣島には何の苦労もなく、ありふれた日常としてあったので、これはアリだと思って移住をしました。 よかったですね。沖縄の生活が丸5年、そこでの経験はいかがでしたか? 石垣島での5年間は、自然の中で子ども同士が野放図に遊び、大人からも鍛えられ、生きる力がつきました。机の上の勉強では得られない知恵と言いますか。島の中でも辺鄙な所で、全校児童10数名という学校は大家族のようで本当に豊か。小1から中3までのいろんな学年の子が一緒に遊ぶとなると、一つの遊びでもルールを工夫したり、小さな子をいたわったり、年上の子にこれはできないと自分たちで交渉したり。すごく社会性が身につくなぁと。人数が少ないと社会性が育たないという方もおられますが、傍でみていると逆でした。 魚の釣り方、生き物の捕まえ方、触るといけない植物。教えてもらったことを次の世代にまた教える。自然の中でのそういうやり取りはゲームと違って二度と同じことはない。そのたびに頭を使って自分も対応しなくちゃならないし、遊ぶことで子どもは成長すると思います。 コミュニティで遊びながら成長するのは理想的ですね。習い事を考える親へ何かアドバイスをいただけますか。 息子が東京にいた時、2歳児で英語を習っていないのは10人いたら2人くらいの少数派でした。親はいろんな選択肢を用意してあげたいと思う一方、情報がたくさんありすぎると不安になります。RとLが聞き分けられなくなったら私のせいだわ、と思ったりしました(笑)。 息子も習い事はいくつかしましたが、選択基準は「子どもがそれをやりたいかどうか」。習い事には、足し算になるものと、掛け算になるものがある。少なくともなにかやれば足し算になりますが、その子の楽しんでいるものは掛け算になる。掛け算になるものなら思いきりやらせてあげたらいいかな。好きなことに努力が掛け合わさるとすごく化ける。好きでもないことを努力していても、私のピアノがそうでしたがダメですし。好きだけで努力しないのももったいない。好き×努力できるジャンルのものがお子さんにあれば、それは応援してあげたら大きなプラスになりますよね。 確かにそうですね!ちなみに息子さんはどんな習い事を? 仙台にいた頃は水泳。ピアノは私は嫌いでしたが、頭の働きがよくなるというのを本で読んで見学に。でもまったく興味を示さず教室内を逃げ回っていて1,2回でやめました。沖縄ではドラムを。これは今でも好きでやっています。 習い事は意味のあることだと思いますが、結局大人の管理の中でのこと。安心して任せられるのは親としてありがたいですけれど、子どもは子どもの中で遊びながら育つというのが大きい。そういう時間を少しでも多く子どもたちに持ってほしいですね。 子どもは子ども同士の中で成長し合えるのでしょうね。では最後に、角川武蔵野ミュージアムで開催中の個展でオススメな点をお願いします。 空間の造形が素晴らしく、歌集で短歌を味わうのとは違う形で言葉を体感できます。実は、すごい精鋭集団が手掛けていて、短歌を素材に、新しいクリエイティブなことをやってもらったなという感じです。私もひとりの観客として空間を楽しめました。家族にあてた葉書や石垣島で住んでいたマンションからの映像などもあります。ぜひ遊びにいらしてください。 ---ありがとうございました! 2021年10月取材・文/マザール あべみちこ 俵 万智 活動紹介 角川武蔵野ミュージアムのイベント 俵万智 展 #たったひとつの「いいね」 『サラダ記念日』から『未来のサイズ』まで 時代を超えて愛され続ける 国民的歌人 俵万智、初めての本格的個展
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