小学校高学年はのびしろが多い時期でどんどん成長していきますから、親は子どもを見守る姿勢は大切ですね。 担任を経験してわかったのは、子どもの自主性や自由を認めるというのは、ただ見守ることとは違う。子どもが何か興味をもち、打ち込める環境は用意する。何も用意しないで子どもを自由にすると、子どもはただラクなほうへ流れていくだけ。子どもがいい方向へ導かれるように、大人はその環境を用意する。ただし、強制はしない。例えば、子どもに読んでほしいと思う本があった場合に、それを読みなさいと渡すのは強制であって、そっとその子の机の上に置いておいて、読むか読まないかはその子の自由というのが環境を与える。わかりやすくいえば、そういうことです。 本棚に読んでほしい本を置いて、その子が読みたくなる時期が来るのを親はじっと待っていられるかどうかですね。では、教育に必要なのは、これだな!とオトタケさんが感じられることは何ですか? すごく臭い言い方になりますが、やっぱり「愛」だなと。自己肯定感というのかな。子どもと接していると、なかなかそれが育みにくい時代なのかなと感じます。まずはその存在を認めてあげて、「ああ、自分は愛されている。認められているんだ」と肯定感を与えてあげた上で、足りないところや伸ばしてほしいところを指摘する。そうするとアドバイスが生きてくると思います。核になる部分を何も認めてあげていない上で、たとえ本心では認めてあげていてもそれを伝えずに、ダメなことばかり指摘されてしまうと、子どもはすごく不安になります。あれこれお説教する前に、その子が自分にとっていかに大切なのかという愛情をしっかり伝えているか?というのが、まずは大事なんじゃないかと。 本当に耳が痛いお話なのですが(笑)。核になる部分をすっ飛ばして、親ってあれダメこれダメと言ってしまいがち。どうすればいい親子関係を築けるのでしょうね? 教員生活最後の年、僕は4年生を担任しました。『2分の1成人式』という10年間育ってきた感謝の気持ちを保護者の方へ伝える行事があって、最後にサプライズでお家の方から子どもたちに手紙を書いて頂いて、それを子どもたちに読んでもらいました。子どもたち皆、大号泣で「お母さんが普段口うるさいのは、自分のことを良くしようと思ってくれていたのだとわかりました」という気付きの感想をたくさんもらいました。これって、彼氏と彼女の恋人関係と一緒で、好きと言わなくてもわかるだろ…というのと同じなんです。親は照れ臭いから自分の子に好きとか大切とか言わない。言わなくても、わかっているでしょ?と思いこんでいる。でも、子どもはわかっていないんですよ。それが、親から子への手紙の反応で僕はわかりました。学年最後の保護者会で、「親が子どもを愛することなんて当たり前だから言わないのかもしれないけれど、もっと子どもたちに気持ちを伝えてください。そうでないと、普段からのお説教が届かないばかりか、子どもを不安にさせてしまうだけになってしまいます」…とお話しました。 なるほど!手紙で書き言葉を読む。大事だという気持ちを受け取るのも、子どもたちにとってはサプライズだったでしょうね。私は今、思春期の息子に「大好き!」とか「大切」と言ってみても「キモチワリィ!」と言われてしまいますが、小学生時代はいっぱい言葉にしてあげるべきなんでしょうね。 いや、中学生になっても言ってあげた方がいいんですよ。手紙ならいいと思います。自分のことを振り返っても、反抗期って本当に親のことが嫌いで憎んでいるわけじゃなくて、照れ臭さとうっとおしさが半々なんです。だから、中学時代で曲がっていっちゃう場合もある。そういう時こそ、自分を愛してくれている存在があることを伝えるほうがいい。でも面と向かって言うと罵倒されてしまうかもしれないから手紙がいい。「こんなもの書くなよ」とか、多少のお叱りはあるかもしれませんが、内心はすごくうれしいんじゃないですか?男の子はカワイイから、枕の下に手紙入れて寝ちゃうかもしれない(笑)。 さっそくやってみます(笑)。ところでオトタケさんは子どもの頃、大人になったらどうなりたいというのはありましたか? なかったですね。だからこそ今の子どもたちには、なりたい職業をもつのもいいけれど、どんな大人になりたいか?を考えられるようにしようねと言っています。それは自分の子ども時代の裏返しというか、僕も小さな頃からそういうことを考える機会があればよかったなと思うので。 職業ではなくビジョンを持つこと大切ですね。オトタケさんは今後教育の分野でどのような形で関わっていかれるのかな?と勝手に期待度が高まっていますが、いかがですか? 杉並区の教職員として3年間、その前は新宿区の非常勤職員として2年間、合計5年間教育現場での貴重な経験を積ませていただきましたので、これをオトタケヒロタダというフィルターを通して伝えていきたいと思っていますし、その皮ぎりとして今回こうした小説も書かせていただきました。これからも著作や講演会などを通じて、伝えていきたいと思っています。伝えるという仕事をしっかりしていきたいのが一つ。あわせて自分は常に現場を通して、子どもたちと触れ合ってそこで感じたことを伝えていくということもしていきたい。なので、何らかの形で今後も現場に関わっていきたいというのがもう一つ。 ---ありがとうございました! <了>
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