小原さんはピアノの先生を指導されていらっしゃると伺いました。子どもたちに教えるのとは全然違うと思いますが、大切なポイントとは? 音楽的な点でいえば、ショパンやソナタなどコンクール向けの曲を勉強するのはもちろん大事なことですが、実際子どもたちに指導する時は難しい曲だけでなく、子ども向けの教材を研究したり、どういうふうに指導するのかも重要なポイントです。残念ながら音大のカリキュラムでは、簡単な曲をどう弾くかは教わらない。ですから「猫ふんじゃった」でさえ、『あんな猫ふんじゃった、弾きたい!』と子どもに思ってもらえるような曲づくりを指導者は出来ないといけない。難曲を弾くのと同じレベルでやさしい小品を心をこめて演奏できる先生を目指して厳しく指導します。 ご両親、特にお父様は音楽家として小原さんがピアノを続けることに、どんな教育方針をお持ちでしたか? とにかく本人のやる気次第という考え方でした。無理やりやらされているのならやめたほうがいいと。だから「練習しろ」とは一切何も言われませんでした。それで「やる気がないなら大学へ進学する必要はない」と宣告されて……そう言われて、ピアノを本気でやりたい自分に気付いたわけです(笑)。そして本当に音楽を一生やりたくなったのは、もっと遅くてデビューしてからです。仕事になったら演奏に責任をもたなくてはならないし、楽譜を見てパッとすぐ弾けるタイプでしたので、学生時代はあまり練習をしなかったのですが。プロになってから練習時間がすごく増えた(笑)。 それって、やはりプロならではの意識でしょうか? 僕の場合、左手薬指が生まれつき動かなかったわけですが、途中で小指まで動かなくなってしまったんですね。演奏中にじん帯が切れてしまったのです。33歳の頃、3枚目のソロアルバムを出した時でした。すごく簡単なところで弾き間違えて、なんで今日はこんなところで間違えるのだろう?と思ったら、小指がぶらぶらしていた。でも演奏自体は1日休んだだけで、あとはギプスをはめて弾いていました。ギプスを取ってからも小指は動かなかったのでリハビリを兼ねてようやく真剣に練習をするように。その時、先生に言われたのは「治そうとか、完璧に戻そうと思うのは無駄。嫌ならやめなさい。続けたいならその指で最善の音楽を作れるような研究をしなさい。あなたしかできない音色を弾きなさい」と。 個性的な弾き語りに、そうしたエピソードが詰まっていたわけですね。ピアノを習っている子どもたちに何かメッセージを頂けますか? 子どもたちにピアニストになるための指導は特にしていません。そして、決まった教育方針もあまりない。そうではなくて習う子ども一人ひとりの力、環境などをみて指導方法を変えています。ただ上手になるためだけの練習でなくていいし、たとえば成長過程でいったんピアノを辞めざるを得なくても、また戻ってきたいなと思ってもらえるように教えています。音楽は無くても生きていけるけど、あったらより幸せに、豊かになれるものですから。それから習うだけでなく、人前で弾く機会を得ることも大事。聴く人がいるから弾くのです。先生に褒められたい、コンクールで上位を目指すため…というよりも、誰か大切な人のために弾いてあげたいという気持ちになってほしい。誰かに何かを伝えるための演奏であってほしい。それってもしかしたら普通のピアノの先生はあんまり教えないことかもしれませんが。 ---ありがとうございました! <了>
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