星覚 (せいがく)さん 雲水(うんすいとは禅の修行僧のこと) 星覚さんは大学卒業後に永平寺へ修行に行かれたと聞いてます。俳優としても活動されていますよね?イケメンのバイリンガルとしたら、もうそれ以上何を求めるんでしょ?なんて思いますが、何がきっかけで禅の世界へ? 本の冒頭でも書いていますが、僕は小さな頃から「人から認められたい、ほめられたい、誰にも負けない能力を身につけたい」と常に満たされない何かを求めていました。俳優として評価されたかったし、もっと素敵な女性と付き合いたい、もっと金持ちになりたい、もっとちやほやされたい…そういう欲望が強くて。でもある時、尊敬する演出家の奈良橋陽子さんから「余計なものを取り除いていくのが俳優だ」と教えて頂きました。その方は当時、映画『ラストサムライ』を撮影していたのですが、お金で買えない「侍」という存在は一体何だろう?と調べ始めて…すると道元禅師につながりました。道元禅師が伝えていることと奈良橋さんが言っていたことが見事にシンクロして胸に響きました。それをもっと知りたくて就職活動はせずに、大学卒業後すぐ永平寺へ修行に行きました。 禅に出会ったことで「にぎりしめ、着飾っていく生き方から、手放し、磨きおとしていく生き方へ変わった」と本にも書いていらっしゃいますね。永平寺の生活とはどういうものですか? 楽しさも苦しさも五感に映る一日のすべてがキラキラ、イキイキと輝き始める…そんな毎日です。禅といっても特別な秘法ではないのです。僕は具体的に、生活の所作をひたすら行うだけで、欲をコントロールする術を知りました。なんとかこの秘密を都会に住んでいる人にも伝えたい…と、多くのお寺に足を運び、禅のあり方を学ぶうちに、誰もが禅を日常生活に活かす方法があるのだと確信しました。それを2年がかりでまとめたのが今回送りだした本です。禅は磨き落として行く作業なので、何年永平寺にいても足りないものです。 禅というと坐禅を組むことや精進料理なんてことばかりイメージしますが、日常的な作法なんですね。おもしろいなーと感じたのは朝起きてから夜眠るまでの作法…たとえば挨拶の作法なども事細かに決められていて、それがとても日本ならではの奥ゆかしさ。誰もが忘れている心意気が詰まっているなーという点でした。 禅は身体と心がほどけて一つになるプロセスなんです。身体の動きを調えていけば、心も自然と調っていきます。禅寺の三つの基本「三進退」は合掌・叉手(しゃしゅ)・法界定印(ほっかいじょういん)。座ってる時、立って歩く時、祈りを込める時の手の姿勢のこと。これを身体で覚えることで、日常の所作すべてを美しくする基本が培われます。こんな言葉があります。
|
|