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内部被曝の脅威を説き続ける被曝医師 肥田舜太郎さん広島の消えた日―被爆軍医の証言  影書房
被曝国がなぜ原発を作ることになったのか?広島の消えた日―被爆軍医の証言(影書房)

こんな小さな島国で地震国なうえ憲法9条も作った日本が、なぜまたたくさんの原発をつくることになったのですか?

アメリカに売り込まれたのです。はじめは化学兵器、その後は潜水艦用の発電機となった。音がしないから武器となる。原料は石炭でなく、ウランを燃やして使い半永久的なエンジンになった。学者はまさかそれを爆弾にするなんて思いもよらなかったのだけど、アメリカとしては「ヒットラーに先に作られたら終わりだ。その前に自分たちが何とかドイツより先に作らねば」と思ったわけです。そうしてヒットラーをあきらめさせるには放射性物質を粉にしてドイツ市民が食べる畑にそれを撒いて、膨大な数の市民を病人にすればいいと恐ろしい結論を出した。戦争が終わってからもずっと人を殺し続ける物になってしまった。

戦争によって人工的な放射性物質が作られたという歴史をまず知るべきですね。戦争直後、無視された内部被曝は、外部被曝と同様に人体に影響を与える。

内部被曝が有害だという事実をどれだけの人が知っているのでしょう?日本人がモルモットにされたわけです。将来、戦争でこの爆弾(放射性物質)がどう使えるのか。どのような影響を人体に与えられるのか。与えるためにどのように改良すべきか。そういうことを知るために何年にもわたってアメリカは日本を占領して調査を行いました。戦後、こうした事実を心ある医師や弁護士が身の危険を冒しながら伝えてきました。

私の知り合いのお婆さんで女学生時代に広島で原爆にあって頭に無数のガラス破片が刺さり命からがら生き延びて、今81歳になる方がおられます。同じように外部被曝にあって即死された方もおられる中、なぜ生きられる方と、そうでない方がおられるのでしょう?

それは放射線と人の関係について知らないといけません。放射線はうけた人の体の状態によってみんな違います。その人の年齢や健康状態、習慣、食べるもの、考え方…すべて異なるわけです。あう人間によってストロンチウム90が何を引き起こすのか、それぞれ違うわけです。だって身体の条件が違うのですから。「同じように被曝をして、同じことが起こらないのは変だ」という理屈は、核を使う側の人間の発想です。

肥田先生は医師として核による人体への影響力を追跡されてこられました。多くの人に起こった事実を後世に伝えるために心がけてこられたことはございますか?

広島、長崎でも現在21万人の被爆者が生き残っています。彼らは身体にそういう条件があった。なぜ一人ひとり身体の条件が違うのか意識的に診てきた医師は私一人きりでした。ただ、私は被爆者が嫌いでした。戦争で被害に遭ったのは広島や長崎で原爆に遭った人だけじゃない。多くの人がさまざまな形で被害に遭ってきた。そして被爆者同士、差別もうまれ力関係もうまれた。私はそうしたことに取り込まれたくなかったのです。「命は皆平等」だと思っています。東京大空襲で死んだ人も、広島で被曝して死んだ人も、皆、戦争のために命を落とさせられた被害者です。戦争は二度と起こしてはならない、そう決意して共産党に入って政治活動も行ってきました。

内部被曝の脅威 原爆から劣化ウラン弾まで 肥田舜太郎・鎌仲ひとみ共著 (ちくま新書)

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