ロイヤルバレエ団では大変な競争があると思いますが、その中で勝ち残っていくにはどんな心構えが必要ですか? ロイヤルバレエ団は入団までも厳しいオーディションがあります。バレエをする家系、血統など選ばれた人が入ってきます。ロイヤルバレエ団に入るまでに10歳から17歳くらいの生徒が通うロウアースクールがありますが、そこに入団するにも選抜があります。そこでレッスンしてきた子のほとんどがロイヤルバレエ団へ進みます。私が単身で渡英したのが17歳でしたから、まず最初の3ヵ月はショックで(笑)。彼女たちとは立ち姿から違いますから劣等感の毎日。なぜ私はここに来てしまったのだろう…という後悔の念が湧いて。 でもそのプレッシャーを乗り越えられたのは、何がきっかけになったのですか? 1年生の最後にスクールパフォーマンスというのがありまして2年生の公演で人数が足りないと1年生も入れてもらえるんです。多くはカバー(代役)で、名前をそこに連ねるだけでも1年生としては幸せなこと。私もそこに入れてもらえて、信じられない想いでとてもうれしかった。「もしかするともっと練習すれば、もっと何かいいことが起こるかもしれない…」という予感がして、春休み皆が実家に帰っている間、こっそり一人スタジオで自主練を続けたのです。春休み明けて先生が「休み前に習ったことを今ここでやってみて」と言われ、その場がちょっとしたオーディションになりました。そこで私は自主練の成果もあってちょっとうまくできたので、卒業公演で役をもらうことができたんです。それがきっかけで、校長先生をはじめ他の先生方にも名前を知られるようになりました。 チャンスを引き寄せていますよね。それも練習の積み重ねの結果でしょうか? 「奈緒ちゃんは人よりうんとできるから…」と言われるよりも「奈緒ちゃんはこんなところができないからもっと練習しなさい」と先生方に指導されてきました。だから人より練習しなければ…という思いが強かったんですね。ロイヤルバレエ団でも、皆より練習すればどうにかなるかも…という思いでいましたし、実は今でもそうなんです。 その謙虚さが今の奈緒さんの地位を築いているのでしょうね。では今秋公演「シルヴィア」への意気込みをお聞かせください。 この作品はもともと93年に吉田都さんに振付師のデヴィット・ビントレーが振りつけたものを2009年に私がバーミンガム・ロイヤルバレエ団の舞台で踊る際、新しく振りを付け直してくれた、いわば新作です。愛を失ったり、愛することを忘れてしまった男女にエロスを思い出させ、もう一度愛を分かち合おう…というラブストーリーの設定。音楽もエキサイティングですし、踊りも高い技術を問われるものばかり。しかもコメディも含まれているという見どころたっぷりなバレエ公演です。 秋が楽しみですね。最後に、今バレエを習っている、あるいはこれからバレエを習わせたいと思う親子へメッセージをお願いします。 私は母に何ら強制されずに好きなバレエを好きなまま続けてこられました。でもやはり与えられている環境に感謝する気持ちは大事。感謝の心がいろんなチャンスを引き寄せてくれるのだと思います。練習が好きだったということはありますが、努力することで道は拓けてくるものです。私が将来子どもを産んで育てることになったら、母が私にしたようにきっとバレエ公演に連れて行って「やってみる?」と聞くと思います(笑)。 ---ありがとうございました! <了>
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●佐久間奈緒さん活動情報
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