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日本人初8000m峰全14座完全登頂を遂げたプロ登山家 竹内洋岳さん『初代 竹内洋岳に聞く』(筑摩書房)
親子とはいえ、人は個々に違う。『初代 竹内洋岳に聞く』(筑摩書房)

幼少期のお話しもぜひお聞きしたいのです。やっぱり活発でいらしたんですか?

幼稚園の頃はとにかく体が弱くて休むことが多かったです。幼稚園では出席ノートみたいなのありましたよね?あれに登園シールがまったく貼られていない(笑)。小学1,2年生の頃も月曜から木曜続けて登校すると金曜日は発熱して保健室で寝ていると母が迎えに来る…という毎週の流れでした。それが序々になくなっていったのですが…体が強くなったのか?と言うと、決して今も強くはないし健康的でもなく…。

それもまた意外です。一般的に登山をする男性は熊のような体型の人をイメージしてしまいますが…竹内さんホッソリとしてファッショナブルですし。

細身なのは登山に適しているのですが、健康診断をしても健康体とは診断されません。身長は180cm、体重60kg程度ですから、やせ過ぎ。血圧も低過ぎ。でも本来、人というのは生まれ方も育ち方も環境も個々で違う。顔形や考え方が違うように人間の体も違うはずです。でも私の場合は登山に適した体。健康という枠には収まらないだけです。食生活も非常に不規則で、ほぼ、一日一食程度。朝も昼も食べず夜だけ食べたり食べなかったり。飲んでいるのもコーラかコーヒーですし。そういう生活は一般的には不健康でしょう。ですから子どもの頃の体質が大人になって変わったわけではなくて、危険を防御してるだけなのかもしれません。ひとよりも間違いなく早く風邪をひきますし、インフルエンザは予防接種をしても罹ります。ただ、お腹(胃腸)は強く、どこの国へ行ってもお腹を壊すことはない(笑)。

まさに登山という環境に合っている体なのですね。

高所登山を続ける中で生き延びてゆけるように体が進化したのでしょう。高所に適しているということは、低所には向かない。とはいえ私は都会にいたほうが居心地いい。田舎の生活には適していないような感じがします。持って生まれた体質が人それぞれある上、成長過程で環境にふさわしい健康の状態を適応していくものです。

個々に違う、というのは本当にそうだと思います。竹内さんにはお二人息子さんがいらっしゃいますが、やはり二人ともそれぞれ持ち味が違いますか。父親として大切にされている教育方針はありますか?

上が小1、下が年中ですが、二人のタイプは全然違いますね。上は言うことを聞かない、下はふてぶてしい。この性分は大人になっても変わらないでしょう(笑)。私自身、子どもの頃、親から何かをやれと言われてもやったことが無い。やるなと言われると隠れてやる…そういう本質は変わっていないですね。これは教育方針というよりも彼らとの付き合い方で、自分の人格とは別だということを痛感しています。親だから子どもだからというものではなく、本人は本人でしかない。立場的な役割からよりも、一人の人間として、何かを伝えるようにしています。子どもは世の中から預かっているものだと思います。子どもとしてより男として扱われたいと思うだろうし、親だからといって子どもの人格に立ち入ることはできない。つまり、親子としての関係より、人間同士として関わりたいんです。

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