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子供の習い事トップ > ブログ・コラム・特集 > シリーズ・この人に聞く!第93回 > 3
日本舞踊界を担う若手ホープ日本舞踊家 花柳芳次郎さん海外でも日本舞踊は鑑賞されるが、裾野を広げるために小中高生にも伝えたい。
基本は継承しつつ、新しい創作へ意欲をもつ。海外でも日本舞踊は鑑賞されるが、裾野を広げるために小中高生にも伝えたい。

日本舞踊のおもしろさはどんな点にあるのか、どうして日本舞踊を習おうとするのかぜひお聞かせください。

日本舞踊をやっている人は、大体お母さんやお婆ちゃんがやっていたから…という方が多い。家族で誰も日本舞踊に縁がなかったとしても、やりたいと思う人をもっと増やしていきたい。中学三年生で芳次郎を襲名した時に「せっかく家業を継ぐ立場におかれているのなら先祖が築いてくださった伝統は守り、なおかつ自分の色をつけ大きく成長させよう」と思いました。もちろん日本舞踊の古典は大事に継承しつつ、伝統に加えて創作や自分だからできることをプラスαしていくことにおもしろさも可能性もあるのです。私がこの先変えたいと思っているのは日本舞踊の何かというよりも、そういう内面的、意識面のようなところなのかもしれません。

敷居の高さを感じさせない日本舞踊になるといいですね。外国のお客様を意識した取り組みは何かされていますか?

海外公演は無いわけではありません。ただ、アメリカ、ヨーロッパなど観劇文化が定着している国での公演がほとんどです。観に来てくださるお客様は日本に関わりのある方が多いのではないでしょうか。ただ公演を開催するだけですとお客様の裾野が広がらないので、現地の小中学生、その保護者向けに体験型ワークショップのようなものを企画していきたいと思っています。まずは着物を着てもらう、お扇子を持ってもらう…つまり日本の伝統文化に触れてもらえるだけでも良いのです。敷居が高いという固定観念を崩すことが大事で間口を広げたいですね。例えば、日本国内で言ったら英会話を習いに行こうという感覚で、日本舞踊も考えてもらいたいなと。

中高時代の留学経験がおありだとお聞きしていますが、こうした思考に結びついているのでしょうか?

そうですね。僕は中2、高1の2回、数週間イギリスに短期留学を経験しました。異国で同年代のヨーロッパの友人が自国文化を紹介しているのをすごいなぁと。芸術に国境は無い。僕も世界に日本舞踊を紹介できるようになりたいとその時思いました。自国文化に興味があれば他国も知りたくなります。海外へ自国のことを伝えるのは、そういう相乗効果があります。例えば、日本舞踊の「間」は日本ならではの感覚ですが、海外では「カウント」という概念に置き換えれば伝わります。ちょっとバレエのようですが、イメージは理解しやすいはずです。

現在早稲田大学人間科学部の3年生でいらっしゃいますが、現役大学生の日本舞踊家となると、就職活動をする他の学生とは少し違う立場ですが、これから何を学んで世の中に還元されたいとお考えですか?

将来、大学で得た知識をどのように日本舞踊という全く違った分野で役立てることができるのか、そんなことを考えています。たとえば私の学んでいる心理学や統計学、異文化間教育などの観点から、総合的に捉える視点がたいせつなのではと思っています。そういう意味で大学では踊りだけでは吸収できない何かを日々吸収しているのだと思います。それを上手く結びつけるというのがこれからの課題ですね。
それから、私は趣味のひとつにカメラがあります。今はライカのレンジファインダーカメラを使っているのですが、数十年前のライカと原理は一緒なのに、カメラについた画面で画像確認ができます。そしてフィルムではなくSDカードに撮影画像がメモリされます。それなのに、感触や重み、映し出される写真の味はしっかりと伝統を守っていて普通のデジカメと言われるものとはひと味違います。こんなふうに無駄に基本的な原理は変えず伝統は残しながら時代のニーズに…という点は、まさに私が目指すこれからの日本舞踊と共通しています。多趣味とよく言われますが、そういった趣味からも色々学ぶこともあるのだなと思いましたね。
2020年、日本には東京オリンピックという大きなイベントがあります。これは、日本の伝統文化の素晴らしさを世界にアピールするのにこの上ない最高の場であり、私にとってもチャンスだと思っています。間口を広めつつ、日本の若い世代、そして国境を越え日本舞踊を楽しんでもらえるよう努めていきたいです。

6歳の頃、祖父と共に。平成11年9月 第47回舞踊華扇会橋弁慶 牛若丸(国立大劇場)

---ありがとうございました!
美しい芸を身につけていらっしゃるからか、物腰や言葉の端々から品の良さを窺い知ることができました。ふつうの大学三年生といえば就職活動を考える頃で敬語もあやしい若者が多い昨今ですが、芳次郎さんはどんな質問にもとまどうことなくゆっくり自分の言葉で正直に語ってくださいました。日本舞踊の奥深さと魅力をたくさんの方に伝えてゆく旗手として、これからを楽しみにしています。

<了>
取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

●花柳芳次郎さん活動情報

花柳流流祖生誕200年祭三代家元七回忌追善舞踊会

  • 花柳流流祖生誕200年祭
    三代家元七回忌追善舞踊会
  • 会場: 歌舞伎座
  • 日程: 10月26日(土)、10月27日(日)
  • 開演: 昼の部/午前10:30   午後の部/午後4:30
  • 芳次郎は27日夜の部で「小鍛冶(こかじ)」という大曲を踊る。
  • お問い合わせ: 花柳流事務所 (電)03-5540-1205

明治座花形舞踊公演

  • 明治座花形舞踊公演
  • 会場: 明治座
  • 日程: 11月27日(水)、11月28日(木)
  • 開演: 午後6:00
  • 芳次郎は27日に「六歌仙姿彩-在原業平(ろっかせんありわらのなりひら)」、28日に、二代、三代壽輔にそれぞれ縁のある「夢殿(ゆめどの)」に出演する。
  • お問い合わせ: 花柳流事務所 (電)03-5540-1205

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