中学受験の問題点を探っていくと、教育格差が浮かび上がってきます。これはこの国の問題でもあり横田さんのご著書でも第六章「教育格差の現場を歩く」に掲載されています。 中学受験の取材を進めるうちに、親の収入の多寡によって教育環境がどこまで違ってくるのか?親の低所得というハンディを背負いながら学ぶことを余儀なくされた子どもたちはその後どのような人生を歩むのか?という点が知りたくなりました。6年間で1700万円掛かる全寮制の私立中高一貫校へ通える子どもがいる一方、生活保護家庭の子どもが通う学習支援塾へ通う子どもがいる。学習レベルも施設環境にも雲泥の差があるわけです。それでいいのか?ですよね。明治時代に封建制度から民主主義に変わったのは、誰もが平等に教育を受けられる権利「教育の機会均等保障」がベースにありました。それなのに今は、逆行しているのではないか?と。 横田さんは息子さんが小さな頃フランスで暮らした経験がおありですから、フランスと日本の教育制度の違いを実感されていらっしゃるのでは? フランスも日本と同様に学歴社会です。しかし、フランスは公教育で大学卒業まで無料。できるだけ同じ条件で子どもたちを競争させるという考え方が、フランスの教育制度の根底にはある。だから4人の子のシングルマザーでも、4人とも大学まで行かせられるのです。日本は年収1500万円の家庭に生まれるか、生活保護受給の家庭に生まれるか…によって受ける教育に歴然と差がある。就ける職業も限定されるのなら社会全体が歪んで停滞します。それでいいのか?ということを世に問いたいのです。 「教育はお金を掛けてこそ良い環境が得られる」と勘違いする人が増えてしまったのは、ビジネス化した受験産業とマスコミの影響も大きいと思います。『楽園はない』と早い段階で認識できるといいですね。 高い塾代を掛けて志望通りの私立中高一貫校へ合格できても、それで終わるのではなく入学した途端に次の目標である大学受験へ向けての塾通いが始まります。とてもお金が掛かりますし、体力も学力も求められ、親子共々疲労困憊するケースもある。お金が掛かるということを前面に出さずに「とてもいい教育環境」という言葉に刷り変えられているのはおかしい。隠さずに全部の情報を並べてから、中学受験をするのかどうかを判断しないと間違えます。私立中高一貫校を辞めた生徒の率こそ、データ公開してほしいものです。 本当にその通りだと思います。著書の最後のほうで公立中高一貫校についても取り上げています。個人的にはこの国が進むべき方向は公立中高一貫校で、むしろ義務教育課程としてこの6年間を国で制度化すべきなんじゃないか?と思いますが、公立中高一貫校が今後増えると思われますか? 東京都の教育庁は現時点では、その方向はないと言っています。結局、納税負担の増加が必要になる話で、簡単なことではないのでしょう。私立中高一貫校は言ってみれば、10万円のバットを買って野球をするようなもの。誰もが皆バットに10万円掛けられませんし、そのバットがなければ野球ができないのなら教育の機会均等が保障されていないわけです。そういうやり方は民主主義に反するのではないか?と思います。2008年のリーマン・ショック以降、私立中高一貫校は受験のピークを終え、2011年以降に都立の中高一貫校が高い進学実績を出すようになってから、明らかに受験生の流れが変わってきています。公教育への回帰に今後も注目していきたいと思います。 ---ありがとうございました! <了> ●横田 増生さん活動情報
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