ユニバーサルデザインを今後どのような形で広めてゆきたいと考えますか? 健常者・障害者という対のような言葉も、なくなればいいと思っています。見えて、聴こえて、歩けて…という人が基本になっている世の中で、それに合わせられない人は障害者。そうではなく、誰もがバリアなく過ごせる社会にしていきたい。例えば、海外ではボディランゲージが豊かで顔の表情も豊かに話してくれます。一方だけの努力ではなく、コミュニケーションを取るお互いが、相手の伝えようとしていることを読み合う努力をしているからです。ハード面もソフト面も言えることですが、障害は環境が作っている部分が多くあります。誰もが楽しめる環境や気配りが整っていれば、障害を障害と感じることも少なくなるでしょう。 果林さんは「あきらめずに発信を続ける」のが信条と本に書かれています。普段私たちが何気なく見ているテレビCMに字幕は付いていませんが、そこに『CMに字幕を』という運動もこの思いでスタートされたのかと。 総務省の指針に基づいて、テレビの番組には字幕がつくのですが、CMには字幕をつけられないのをご存知でしたか?CMって最強の宣伝メディアなのに、約2000万人もいる聞こえにくい人たちには伝わっていないのです。そうした課題を伝え続けることで必ず興味をもち、共感してくれる人が現れます。CMにも字幕がほしいという声に興味をもってくれたのはITやメディア関係の情報雑誌『月刊ニューメディア』の編集長、吉井勇さんでした。そのキーパーソンから派生して次々と共感して興味をもつ人が少しずつ増えて大勢の人を巻き込んだものになり、CMにも字幕がほしいと提案し続けて10数年たって国の検討事項となりました。2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催される頃は、テレビをつければすべてに日本語字幕がつき、リモコン一つで多言語に翻訳することもできるという未来を描けます。情報のユニバーサルデザインに向けて、大きな一歩が動き始めました。 まさに「千里の道も一歩から」ですね。そして地元のお住まいでの「井戸端手話の会」は、段々地域を巻き込んで手話文化が根付いてきたようですね。 2003年から始まり、今年で12年目になります。初めは同じマンションに住んでいるママ友5人位でしたが、段々人数が増えてきて、マンションの外から通ってくれる方もおられます。手話通訳士のメンバーもいますし、仕事先で聴覚障害のあるお客さんが来たとき、手話で対応できたと報告してくれるメンバーも多くいます。地域の小学校で手話講座を開催すると、子どもたちも手話に興味をもってくれます。コミュニケーションを最初からあきらめるのではなく、楽しめる環境を作っていくのです。まずは一歩を踏み出すことで、身近な人やご近所の方とつながることができました。 地域のみならず行政や企業、国にユニバーサルデザインを提案して活動する果林さんですが、今後はどんなことに力を注いでいきたいですか? ユニバーサルデザインとは決して難しいことではありません。自分とは違う他者に目を向けて、話を聞き、困っていることや嬉しいことを共有していくことからスタートします。「障害」という言葉もなくなればいいと先程もお伝えしましたが、障害者、健常者ではなく相手を一人の人間、友達、仲間として見てほしいなと思います。皆生まれてきたからには一人ひとりに意味や役割があって、そのために「できること」があります。それって何だろう?と考えてみてほしい。私の役目は「聞こえる世界と、聞こえない世界を、ユニバーサルデザインでつなぐこと」です。今後は、映画やお芝居、コンサートなどの楽しみの部分でも、皆が一緒に楽しめるようにしていきたいです。 ---ありがとうございました! <了> ●松森果林さん 活動情報
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