俳優になったのは仲代達矢さん主宰の「無名塾」がスタートでした。何がきっかけでオーディションを受けられたのですか? 私は映画を観るのが好きで、17歳のある時、渋谷の公園通りを「観たい映画がないなぁ…」とたまたま映画館の先にあるパルコ劇場まで歩いて行ったら、ちょうど仲代達矢さんが演出されていた演劇の看板が出ていて「ちょうど上映時間だから、これでも観ようか」という消極的な感じで人生初の新劇を観賞しました。場内で配付されたプログラムに、年一度の「無名塾」オーディションが翌月にあることを知りました。 人生初の舞台で衝撃の出会い…。お芝居を観てどんな感想をお持ちになりましたか? それは、まったく今まで観たこともない世界が拡がっていて、心をワシ掴みされてしまった。17年間こういうものを知らずに生きてきたことに衝撃を受けました。己が努力すれば、どんな道でも切り拓けるというチャンスに開眼しました。舞台のものづくりに関われるならどんな仕事でもしたい!と思って、最初は問い合わせのつもりで事務局に電話をしたら「すぐに履歴書を送りなさい」と促され、オーディションを受けてみることになりました。1月に入塾審査を受けて合格となり、大学受験はもちろん辞めて高校卒業後すぐに「無名塾」へ入塾しました。 タイミングよく、すべてそういう流れに添ったのですね。 「無名塾」は3年間養成塾生として基礎を勉強します。ものづくりに憧れていた私にとって毎日がパラダイスでしたが、2年を終えた時にNHK朝の連続テレビ小説の主役に抜擢され、養成3年目を泣く泣く諦めて大阪へ単身赴任。ドラマの撮影に集中することになりました。仲代さんの教えは、舞台も映像も両方できる役者になることでしたので快く送り出してくださったのですが、当時の私は舞台創りを志していたので自分にとって何が良いことなのかわからなくて…今振り返ると本当に幸せな機会だったとわかります。 ベテラン女優として歩んでこられた若村さんですが、10月に新国立劇場の舞台に立たれます。「ブレス・オブ・ライフ ~女の肖像~」という作品の魅力を教えてください。 タイプの違う二人の女性の生き方が表れる舞台です。フランシスは良妻賢母として家庭に重きを置いて人生を送ってきた女性ですが、私が演じるマデリンはキャリア・ウーマン。仕事を持ち、社会と接点をもち活動をしてきたアクティブな女性。二人はマーティンという男性を愛した共通点があります。二人と別れた彼は、若い女性と一緒になってアメリカに渡って新しい暮らしを営んでいます。元妻、元愛人はお互いに既に彼とは終わっているにも関わらず、こうして女性として改めて対峙して、自分が信じていたものは何だったのか?という確認作業が始まります。 ⇒ [3]を読む |
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