聞いているだけで早く観たい!という気になります。若村さんはマデリンという役に、共感されましたか? マデリンはバークレー大学で学び、博物館で学芸員として働く女性です。公民権運動に関わるなど社会に興味をもっています。物事の起源を探る仕事で、現実とか事実を重んじるタイプの彼女には適職。空想でお茶を濁すことは好きでないのです。私自身は、ものづくりが好きなので、マデリンとタイプは違います。でも今回の二人芝居で、プロデューサーには「マデリンは若村さんしかいない」と指名されました。相手役のフランシスでないのはなぜか?は私にはわかりません(笑)。 なるほど。そのマデリンの前に突如現れたフランシスですが、目的は何だったのでしょう? フランシスは良妻賢母でありながら、小説を書いたら大ヒットして今や超人気作家としての地位を築いています。その彼女が自分達のことを書きたいと、別れた夫の愛人であったマデリンのもとを訪ねてきます。彼を愛した時間は、一体自分にとって何だったのか?ということを知るために。 イギリスの劇作家デイヴィッド・ヘアの作品は視点がとてもユニークだとお聞きしてますが、若村さんにとっては2回目とか? 97年に「スカイライト」という舞台を緒形拳さんと演じました。今回17年ぶりにデイヴィッド・ヘアの作品に挑戦します。いわゆる「言葉のボクシング」、今回の新国立劇場のシリーズ名にもあるように、まさしく「対話する力」が求められます。駆け引きしながらお互いが深く本音を語る中に、想像外の質問や行動があります。二人が新しい朝を迎える…という結末は、デイヴィッド・ヘアの作品共通です。 細かな設定もおもしろいです。元妻フランシスが元愛人マデリンを訪ねる。お互い会うのは初めてでも、一人の男を巡ってお互いを意識していた頃があるのは、複雑な心情なのでは? マデリンとマーティンは、お互い独身時代にかつてキング牧師の演説を共に聞いた共有体験があります。運命の出会いと思ったにも関わらず、不器用な性格さゆえ『この男は私のすべてを愛してはくれない』と直感します。それで自ら別れてしまい、15年後に再会してまた運命を感じるのですが、その時は既にマーティンは家庭をもっていて…。だからといってマデリンは今さら自分と一緒になってほしい…などと言うような女性ではありません。一方、フランシスも、恨みやつらみをぶつけにマデリンを訪ねたわけではありません。自分の信じていたものは何だったのかを確認する相手は、別れた夫ではなく、同じ時間、同じ男を共有していた唯一の人物マデリンしかいなかったのです。 観る人がいろんな受けとめ方のできるお芝居だと思いますが、どんな方に観てほしいですか? 女性同士はもちろん、女性の心理を知りたい男性にも観てほしいです。そして終演後、どんな会話をするのか知りたい(笑)。そこからいろんなドラマがうまれそうですね。 ---ありがとうございました! <了> ●若村麻由美さん 活動情報
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