今村 彩子(いまむら あやこ) Studio AYA代表/名古屋市出身 新作「Start Line」マスコミ試写会で観覧して、これは多くの同世代、特にお母さんに観てほしいと感じました。本作は何がきっかけとなって撮影することになったのですか? この作品は、個人的に自転車にハマっていたこと。私の母と祖父を続けて二人亡くしたことがきっかけとなりました。自転車で沖縄から北海道まで57日間、日本縦断の旅をします。映画館で上映された作品は3作目となりますが、撮影してきた作品としては27作目です。大学生時代から撮り続けて17年になります。 台湾にも似ている作品があると知人から聞きましたが、伴走者テツさんや、奇跡的に出会う聴覚障がいのオーストラリア人ウィルのような登場人物は真似できないのでは? その台湾の作品は、私も知っています。同じ自転車のロードムービーでも中身は全然違います。伴走して撮影してくれたのがテツさんだからこそ、この作品はできました。プロのカメラマンに撮影してもらうことも考えましたが、撮影は素人であっても自転車屋のテツさんは、私のダメなところも全部指摘しながら臨んでくれました。撮影をお願いしたのは、いい選択だったと思います。 テツさんとの本気のぶつかり合いは何度も胸が熱くなりました。この作品のテーマはコミュニケーションですが、一番伝えたいことはどんなことでしたか? コミュニケーションは言葉だけでなく、相手の表情や雰囲気もあります。聞こえないから情報を知ることができないと、ある時まで私は思っていました。でもオーストラリア人の聴覚障がい者 ウィルに出会ってから、彼の方が異国でコミュニケーションを取るのはもっと大変のはずなのに、うまく皆の輪の中に入っていけて楽しそうにコミュニケーションできていることに衝撃を覚えました。旅の最後3日間は私にとってはツライものでした。自分はなんてダメなんだろう……と落ち込みました。 そこから這い上がって気づきがたくさんありましたよね。自分でカメラも回して編集も手がけられ、この作品テーマは最初から明確にあったものですか? カメラを回した時間は349時間31分。この編集は膨大にあって大変でした。旅を振り返りながらの作業は、自分のカラダを自分で手術するような痛みを伴うもの。辛いことですが膿を出していると感じました。本人は冷静に見られないこともあったので、フリーのディレクターにも加わってもらって本格的に編集に臨みました。 |
|