森さんの意外な面をたくさんお聞きできて楽しいのですが、旅好きになったきっかけは何でしたか? 私、中1の頃からチューリップというバンドのギタリスト安部俊幸さんの大ファンで、彼の書いた『ひとりぼっちのアメリカ見聞録』という本で旅のおもしろさを知りました。グレイハウンドという路線バスで西から東をアメリカ横断したエッセイで、ツアーでなくとも旅ができるんだ!と驚いて、私も安部さんとまったく同じ体験がしたい!という思いが強まったんです。私の体の90%はチューリップでできているといえるほど(笑)かっこいい!と思う初めての大人が彼らでした。ミーハー精神で彼らが好きとか良いと言っていることは、とにかく真似てみた。例えば「映画『ブリキの太鼓』は名作だ」といわれれば、500円玉を握りしめて映画館へ駆け込み、「ど、ど、どこが名作?」…と引きつつも、右へならえ。かっこいい大人の背中を追っかけることから始まりました。お小遣いを貯めて買った雑誌やアルバムの歌詞カードは、隅から隅まで暗記するくらい読みましたねぇ。コンサートチケットも始発電車に乗って大阪中央郵便局から現金書留で申し込んだり。他は常に良い子な分、親も渋々それだけは許してくれました(笑)。 そのエネルギーは当時からのものでしたか!ググって知ったつもりになる…というのがなかった分、其処に行って体験するしかなかったですもんね。 言語の使い方ひとつにしても、安部俊幸さんのエッセイの影響をすごく受けたし、チューリップのリーダー・財津和夫さんのエッセイで「こどもには愛がない」という言葉を読んだ時も衝撃を受けましたね。子どもは自分のことしか考えていない。自分の気持ちがまず最優先で、でもやがて他者とのかかわりが持てた時、はじめて愛が生まれる…という理屈です。子どもは純真無垢、素朴…という言葉はよく聞きますが、財津氏の言葉はつまりちゃんと子どもを子どもとして見る視点。「あなたが好きなようにすればいいわ」「あなたには悪気がないって信じてる」と、ややもすると子どもが尊重され過ぎている今の時代、彼の言葉は真を突いている気がします。 それは、子どもの育て方や、習い事への考え方にも通じる言葉ですね? 親の指示で習い事を始めたような子が私の頃はほとんどで、逆に言えば、自分で決めることをあまり強いられなかったから、のほほんと子どもを満喫できた。今のように「お母さんあなたの好きなことを応援するわ!」とあんまり早くから言われちゃっても、本当に好きなことは子ども時代には掴めないものではないかなぁ?と思います。私は小2からお習字を2年位と、小1からピアノを4年位習っていました。姉はどちらも上手にできる子でしたが、私は両方とも向かなかった。お習字は文字の横に絵を描いて、それに丸をもらっていたくらい。基礎にひととおり触れ、自分の不得意がわかる通過儀礼として経験できたのはよかったと思います。 お子さんにはどんな習い事を?森さんはどんな教育方針をお持ちでしたか? 周りの子に比べて、かなり習い事も少なかったですが、娘には通過儀礼ということで小1からピアノを。保育園時代から近所の英会話教室に週1回。中学入学後は英語の多読に通っていました。英語教育については私なりにこだわりがありまして、日本語でコミュニケーションが取れて、ゼロから英語を体得した経験がある先生であること、つまり日本人に教えてもらうことを大切にしていました。英語の多読はボキャブラリーが増えて世界が広がるから、おすすめですね。
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