アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン ジャーナリスト。自分の娘を病気で亡くした経験を持つ。病気が見つかってからの日々を綴った『濡れた砂の上の小さな足跡』(講談社)はフランスで35万部の大ベストセラーとなり、世界20カ国で翻訳本が出版された。» 映画「子どもが教えてくれたこと」公式サイトはこちら 監督のお嬢さん(タイスちゃん)が病気だとわかった時、2歳のお誕生日でしたね。どのくらい病気のことを理解していましたか? 物理学、生物学的にはわかっていませんでしたが、完璧に理解していました。もちろん私も臓器内で何が起こっているかなどは説明しませんでしたが、どういうふうに病気が進行するのかについては完璧にわかっていました。告知してからしばらくして5歳の長男ガスパールが「じゃ、タイスの誕生日会をしよう」と言いました。彼にとっては毎年やっていた楽しい行事。子どもは切り替えがちゃんとでき、何か悲しいことが起こってもグズグズ泣いていない。同情し続けないものなのです。 引きずらない強さ。切り替えの早さは子どもの持ち味ですが、大人はなかなかそういうわけにはいかなかったのでは? 大人は自分に降りかかった運命を「どうして?」と呪ったり、動揺して平常心でいられなくなりますが、子どもはありのままを受けとめます。今、この瞬間を生きている。自分の手で人生を開き、とことん生きようとしています。他人を思いやる気持ちもちゃんと持っている。イマド君がお父さんを気遣って、疲れていないかを心配するシーンがそうです。誰も未来を恐れていないし、自然体なのが子どもの素晴らしい点です。 主人公の5人、子ども達が小さな哲学者のようで、発する言葉が心に沁みました。彼らはオーディションをして選んだのですか? オーディションではありません。リサーチに十分時間を長く掛けました。病気の子どもたちを支援する団体に掛け合うなどして、出会ったのは5人だけです。私が望んだのは、十分に準備をして「この子はこういう子だ」というのを頭に入れてからしか会いませんでした。病気を抱え脆弱な状況で生きている子どもたちのキャスティングはとてもデリケートでした。選んでから、「やっぱりあなたじゃない」…とは言えませんから。 納得しました!だからこそ5人の素晴らしい子ども達が登場しているのですね。カメラワークもすべて子どもの目線で撮影されているように感じます。 カメラは一台だけを回しました。それはとても意味があることでした。つまり、罠をかけるようなアングルがないのです。ひとつのカメラで彼らのそのままの姿を映す。子どもたちが不意打ちを食らわないように、どこにどういう感じでカメラがあるか常にわかるようにして撮影しました。 |
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