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望月衣塑子さん

望月 衣塑子(もちづき いそこ)

東京新聞 社会部記者。1975年東京都生まれ。東京新聞社会部記者。慶應義塾大学卒業後、東京・中日新聞入社。千葉、神奈川、埼玉の各県警、東京地検特捜部などで事件を中心に取材する。2004年、日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑の一連の事実をスクープし、自民党と医療業界の利権構造を暴く。東京地裁・高裁での裁判を担当し、その後経済部記者、社会部遊軍記者として、防衛省の武器輸出、軍学共同などをテーマに取材。17年4月以降は、森友学園・加計学園問題の取材チームの一員となり、取材をしながら官房長官会見で質問をし続けている。著書に「新聞記者」「武器輸出と日本企業」、共著に「同調圧力」(すべて角川新書)、「権力と新聞の大問題」(集英社新書)など。二児の母。»  望月 衣塑子 公式twitterはこちら

映画化するまでの挑戦スピリッツ。

6月28日に映画「新聞記者」封切されて1週間後くらいに横浜で映画鑑賞しました。超満員で熱気がすごかったです。原案となった望月さんですが、映画の反響はいかがでしたか?

全国150館で上映されて40万人以上動員と聞いて、広がりを感じています。私となると菅さん(菅義偉官房長官)と日々、質疑をしているので政治色が濃いと敬遠される所もあると思うのですが、映画では松坂桃李さんやシム・ウンギョンさんという透明感のある役者さんが演じながら「内調」という組織の闇を描いているのでフィクションであるという中で観ている人が感情移入しやすい。これまで政治について口を閉ざしてきた俳優やお笑いタレントをはじめ、政権に近いと思っていた大手IT企業社長なども、映画はよかったと評価していました。ノンフィクションではない分、どの程度受け入れられるものか?と思いましたが、それがゆえに普遍的に政治に関心のない人も含め、気持ちが入っていきやすく、共感を生んだのかもしれません。

フィクションとはいえ、おやこれは…あの?というネタが散りばめられていておもしろかったです。こんなに話題なので、もっとメディアで取り上げてくれてもいいのに!と思いましたが…。

映画公開前の盛り上げが重要らしく、予告を流したり、私と前川喜平さん(文部科学省の元トップ)で東京、大阪、沖縄などで講演に出向いてアピールしたりしました。政治部もなく、官邸がメディアをそれほどチェックできていないせいか、大阪以西のエリアでは地上波でも映画を取り上げてくれました。広告は高いので、あえてそこに費用は掛けなかったようでしたが、大阪や沖縄などでは、ニュースとしてたくさん取り上げてもらいました。沖縄は特に今の安倍政権への怒り、マグマを感じました。東京でのマスコミ向けの試写会は毎回満員でした。ただ、参院選挙近くの公開にはハードルもありました。関東キー局の民放に売り込んでも「選挙妨害といわれかねない」と、官邸サイドからのクレームを恐れていた所もありました。あえて参院選前の時期に公開となりましたが、あと1,2週間早くてもよかったですね。

映画の原案は望月さんですが、作品として成立するまで試行錯誤があったのでは?

プロデューサーの河村光庸さんが2年前から企画していろいろな戦略を立て動いてくださったのが大きいです。とにかくセンスが素晴らしく、エリマキトカゲやらエアロビやらを日本で流行らせたアイデアマン。現在、69歳ですが話していて「これやらない?」「これどう?」とポンポンとアイデアや企画が出てくる。メディアが委縮し、忖度が進む中で、芸能の世界でもそういう空気が広がっている状況を変えたいという、強い問題意識がありました。制作会社2社が断ったというのは後で知りました。若手の藤井直人監督も一度はオファーを断わったそうです。でも「あなたは今、政治に関心がないと言うけれど、あなたを取り巻くことすべての事が政治につながっているんだよ。無関心ではいられないはずだ」と河村さんから言われ、考えた末に受けたと聞きました。若手が多く活躍した現場でしたが、一番熱く挑戦していたのは河村さん。そういう問題意識が鍵となって完成した作品です。しかも完成度にこだわり、脚本家が7人も関わってようやくできた。おもしろいだけでなく、人の心と記憶に残るものを創りたい…という想いがあったし、スポンサー確保のため奔走してくださいました。

そうした問題意識をスタッフで共有できたからこその良い作品ですね。ラストシーンも含みがあっておもしろかったです。ご自身も映画に特別出演されています、ご感想は?

ラストのあれはシムさん演じる吉岡記者への「ご・め・ん」とも受け取れますが、家族へ向けての「ご・め・ん」だとみる人もいます。官僚からすると自分の正義はあっても、上から言われればそうせざるを得ない葛藤が常にあるようです。周囲から感動したという感想をもらう一方で、「政府ってここまでするんですか?」という若い人からの反応も多かった。内調という組織は、わかっているようでわからない存在。私もこの仕事をするようになってから知ったのですから、世の中の人は知らない人がほとんど。今は政権の中枢に警察キャリア出身者が次々に入っていて、警察による情報ネットワークを駆使した、情報統制が浸透していると思います。私が特別出演するシーンでは、10回くらい「やっぱり」を言っていて(笑)。口癖なんですね。これまで安倍さんが「いわば」を繰り返す口癖が気になっていましたが、人を笑えないと思いました。どこの部分が使われるかまったくわからない中で7時間ぶっ通しのトークを収録しました。テレビのコメンテーターは短い尺で収めますが、それは難しいし、すごい技です。

映画「新聞記者」は動員数40万人を超える話題作。

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