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パラリンピック競泳選手 一ノ瀬メイさん水泳は自信を与えてくれた自分の軸。
気持ちをゼロにしてモチベーションを保つ。水泳は自信を与えてくれた自分の軸。

パラリンピックとオリンピックの違いを知ると、ますます楽しめそう。今のメイさんの目標とは?

オリンピックも体格の差はもちろんあって、背が高い人がいれば低い人もいて、筋肉量の違いから泳ぎが違うのを見てもおもしろいのですが、それ以上にパラリンピックは違いがあるので見ていておもしろいと思います。障がいの違いや個性が泳ぎに表れることがおもしろく、苦労している部分でもあります。私はずっと世界で戦いたいというのを目標にやってきて、今はまだ闘うというよりも下から食らいついていく感じなので、「世界で戦う」感覚を味わってみたいというのが強くあります。メダルを取っている他の選手への憧れも強いですし、そういう選手みたいになりたいと思います。

闘志はいつも同じように持てるものですか?

私の場合は、いろんなフェーズを通り越してきていますが、わかったのはモチベーションは常に高く保てるわけがない。もちろんモチベーションを毎日高く保てたらいいのでしょうけれど、それは自分はできない性格だと気づいたので、モチベーションに頼って自分を奮い立たせるというよりは自分と向き合って、乗り越えないとならないことをクリアにして、その課題を一つひとつこなしていく感じでやっています。

堅実ですね。

これも近大のスポーツ心理学で学んだことで一番覚えているのですが、「ポジティブ思考がすごくいい。ネガティブはよくない」…とよく言われますが、気持ちをゼロに持っていくことはポジティブに入る。ゼロはマイナスにはなっていないから、気持ちをゼロに持っていくことも前向きな行動の一つ。そういうことを講義で聴いて、ああなるほど、と思ったのです。マイナスからプラスに逆転させようとすることは毎日あると思いますが、それってエネルギーが必要。マイナスをゼロに持っていくなら結構簡単にできる。わざわざプラスに転じてエネルギーを消費するのではなく、ゼロに戻す…というイメージです。

フラットな地点に戻して何度もトライするわけですね。では小さな子を育てるお母さんお父さんに習い事をするならどんなアドバイスをしてあげますか?

日本は一つのことを続けるのが偉い、という風潮がありますが、私は今でも、水泳でよかったのかな?もし陸上ならもっと向いていたかな?と。何が自分に合っているのかわからない中で結局最初に始めたものを続けている人って多い。あきらめることは悪いことと言われることも多いけれど、あきらめるのも勇気がいるし正しい行動の一つだと最近思います。一つのことを続けることが偉い…にこだわってしまうと、親もキツイのかな。子どもにいろいろさせてあげられるならそれが一番ですが、お金も掛かるし大変です。たまたま始めたものが続けばそれがいいけれど、もし続かないなら合っていなかっただけで、他に何かある。続けさせよう…とするのではなく、「これは合ってなかった。じゃあ次は何が好きなのかな?」という気持ちで、その人その人に合ったものを見つけられる機会が習い事だと思うので。合うものを探すつもりでやってみれば本人も楽しいし、親も楽なのではないでしょうか。

---ありがとうございました!
容姿もかわいらしく、体を鍛えている分、心も柔らかく。キラキラとした瞳で飾らない言葉でお話ししてくださったメイさん。障がいを誇らしい体の特徴として成長を続けている姿は、たくさんのことを私たちに伝えてくれます。握手した右肘は心を映しているみたいに、あたたかく柔らかでした。2020年パラリンピックでのご活躍を応援しています!

2019年9月取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

一ノ瀬 メイ 書籍紹介

私が今日も、泳ぐ理由 (パラスイマー 一ノ瀬メイ)

  • 私が今日も、泳ぐ理由 (パラスイマー 一ノ瀬メイ)
  • 金治 直美 著
  • 学研プラス
  • 定価 1,485円(税込)
  • 発売日 2016/8/30
  • 一歳半で水泳を始めた。気がついたら毎日のように泳いでいた。短い右腕は個性なのに、からかう子たちもいて、いつのまにか、水泳は自分を守ってくれる存在になっていた。そうして、十三歳で出場したアジア大会で、新しい大きな世界が見えてきた!私にとって、泳ぐ意味とは―。パラスイマー、一ノ瀬メイ選手の半生と、大きく深い思いをつづった物語。

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