大学卒業後の就職先もユニークですが、就活の時はどういうお考えで選択されたのですか? 友達は大手メーカーなどに決まっていきましたが、私は手芸用品店に就職しました。私は大手メーカーに入るというよりは、何かしら手作業に関わる仕事に就きたいと思っていたんです。そうすると職人になるという道もあったのですが、職人はある分野のエキスパートということですから、日常使うものをなんでも作るという方針だとちょっと違いますよね。手芸に関するものということで仕事を探していたとき、手芸材料を扱うお店は自分にとって一番身近だということに気付きました。ここで働けば材料にも身近に触れられ、自分の勉強にもなっていいんじゃないかと。慶應からは、たった一人。先輩も誰もいませんでした。 周囲もビックリな就職先だったと思いますが、秋園さんとしては幸せな選択で。今は何を主に作っているのでしょう? 3年勤務して、接客業の楽しさと難しさどちらも体験しました。非常に勉強になる事が多く、今の自分の肥やしになっています。プライベートの時間で制作もしていましたが、どうしても作る時間に制限がありました。小学生の頃のように、作る時間にすべて投じたい!という欲求が膨らんで退社して独立。収入というより作りたい気持ちが優先していて、とにかく作ろうと思いひたすら作っていました。 作品が溜まって来たため個展を開いたら、作り方を教えて欲しいという方が現れて運良く教室を開くことになり、今は外部のものも含めて教室を4つ掛け持ちしています。それで完全に食えているわけではありませんが、今は裂き織り作家としてモノづくりに取り組んでいます。裂き織りは古い布を裂いて、機織り機で織り直して生まれ変わらせるのでMOTTAINAI精神の象徴だと言えます。段ボールのロボットを作っていた頃もMOTTAINAI精神を活かしていたと言えますが、それを手芸の世界で活かせるのが裂き織りだ!と。5年後には「ZONO」(自身のブランド)と言えば裂き織りのブランドだと世界的に認知されているようになるのが今の夢です。 裂き織りで今はどんなアイテムを手がけていらっしゃいますか? メンズジャケットを制作しています。この作品は2020年1月6日から14日まで、六本木の東京ミッドタウンで開催される日本クラフト展で展示されます。これは元々は真っ黒の紋付の羽織りで、それを裂き織りにしてジャケットに仕立てました。たて糸はグレーの糸で、よこ糸に細く切った羽織りの布を使って織っています。織物はたて糸とよこ糸でデザインしますが、よこ糸が真っ黒の羽織りだとたて糸も活きて模様が出しやすいんですね。このジャケットのタイトルは「鬼-URAMI-」と言って、あるストーリーが込められています。紋付きの羽織りって冠婚葬祭でしか着ないのでタンスの肥やしになっていることが多いんですが、さらにクリーニングが面倒だからと言って結局レンタルのものを使ってしまったりします。そうやって、物を作るだけ作って最後まで使い切らない人間達への恨みを晴らすために紋付きの羽織りがジャケットになった、というストーリーを考えました。そのため、この作品は前面が鬼の顔をした恨めしいジャケットになっています。 ものすごく素敵な作品なのに、裏にはそんな恐ろしいストーリーがあるのですね(笑)。では、自由に発想する秋園さんから子育てについてアドバイスをお願いします。 二つあります。せかさない、ということが一つ。母は5分で行ける保育園に、帰りは2時間かけて付き合ってくれました。時間に追われていると難しいことですが、うまくお子さんを誘導できたらいいなと思います。もう一つは、習い事をし過ぎている子が多い気がします。週3,4は当たり前みたいで、中には週6も。ちょっと忙し過ぎではないかと。私は週7でロボットのおもちゃ作りをしていましたからね(笑)。その子が習い事をしたくて始めるならいいと思いますが、そんなに忙しくする必要があるのだろうか?と。子どもの頃って何もないところから遊びを創り出すのが一番大切だと思うんです。私はTVゲームとか苦手で、やってみても面白くなくてハマれなかった。人に組まれた枠の中で遊ぶと、結局その中でしか遊べなくなるんじゃないでしょうか。自分で何とかする力、応用力やマネジメント力が減ってしまうのではないかなと思います。 ---ありがとうございました! 2019年12月取材・文/マザール あべみちこ 秋園 圭一 イベント案内
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