この書籍を執筆するにあたって親が子どもの運動に対してどんな悩みをもっているのか座談会をされたとか?どんなお話が出てきましたか? ひとつビックリしたのは、「試合を観に来てほしくない」と親にいうお子さんが多かったことです。僕はいまだに親がこなかった試合は覚えていますし観に来てほしかったので。なぜ?と聞けば、家に帰ってからお母さんに試合のことをあーだこーだ言われたくない。お母さんがナデシコジャパンのメンバーだったらわかる。でもサッカーのことわからないくせに腹が立つ…ということでした。でもスポーツアロママッサージというのを取り入れて、お母さんが試合から帰ってきた子どもの足をマッサージするようになったら、試合のことを話してくれるようになったそうです。トレーナーも選手にマッサージをしながらコミュニケーションを取るのでよくわかりますし、その話を聞いて感動しました。 私もかつて息子が出場していたサッカーの試合で、外野からわぁわぁ!声掛けてきたのでわかります。子どもの心をご飯で満たすというのも重要かと。手抜きもしてきましたが(笑)。 僕の母は、小さな頃から添加物は避けて、おやつも手づくりのものを食べていました。コーラなどの清涼飲料水やレトルト食品などは一切食べさせてもらえませんでした。それだから今、体が丈夫なのだと思います。一番健康を司るのはご飯です。同じトレーニングをしても、何度も骨折したり怪我が多い選手と、まったく怪我なく練習できる選手がいます。やはり、子どもの頃どういう食生活をしてきたか?はある時期になって骨の強さにも出るものです。 運動するには食の意識も欠かせませんね。ではフィジカルトレーナーとして中野さんが毎日心がけているのはどんなことですか? 「不安であれ、不変であれ、共感すること」の3つを大切にしています。100%成果のでるトレーニングはないし、ゴールデンメソッドは世の中に存在しません。算数ではないので正解がない。この方法でいいのだと決定づけてしまうと、間違っていても気づかない。ベテランになるほど「これでいい」と思い込みたくなる。でも毎回、これで本当にいいのか?違ったのではないか?もっといい方法があったのでは?と常に不安でいないと、成長が止まってしまいます。もちろん選手たちには自信をもって「これでいい」と断定して伝えます。でも内面では不安感をいつも持つようにしています。また、選手は気分のアップダウンが激しい。技がきまらなかったり、体調が優れない、監督から怒られたり。トレーナーは常に一定でないと選手を支えられません。いつもテンションが同じ。風邪をひいたり、二日酔いなど許されませんし、プライベートで落ち込むことがあっても表には出しません。最後に、共感できるくらい相手に感情移入できることは大切。例えば、選手が大会前に怪我をして落ち込んでいたら、そういう時に自分も同じくらい悲しい気持ちになれるか。逆に、試合に勝って泣いている時、一緒に泣けるか?です。 最高のコンディションで結果を出すために日々是決戦ですね。2020年はどんな活動を? 今年の東京オリンピックがどうなるかわかりませんが、選手たちがそれに向けて代表となり、調整しています。もし来年に延期になったら今年の代表が繰り上げでなるとは限りません。選考のやり直しもあるでしょう。でも、そこで新しく代表になれるチャンスがうまれる子もいるかもしれない。複雑な気持ちではあります。2020年に限りませんが、メダリストのトレーナーになるのが私の夢です。幸いにも銅メダル、銀メダルは首にかけてもらうことができました。自分がトレーナーであるうちに金メダルを。メダルの色ではなく、すべて意味があるのですけれど。 ---ありがとうございました! 2020年3月取材・文/マザール あべみちこ 中野ジェームズ修一 書籍紹介
|
|