幸野さんの息子さん志有人(しゅうと)さんはプロサッカー選手として活躍中で、娘さんもおられますが、お子さん二人を育てるうえでどんな教育方針をお持ちでしたか。 できるだけ早い時期に好きなことを見つけること。早く見つければ、その分夢を実現するために準備ができる。僕は海外へ連れて行ったり、映画を観に行ったり、子どもに刺激を与えられるような時間を過ごしてきました。その中で、子どもがおもしろいと思うものと巡り合った。親は寄り添うだけで、あとは子どもが切り拓いていくものです。最初のきっかけを与えることです。 志有人さんは12歳で家族を離れて福島のサッカーチームに所属されて寮生活。その後16歳でプロサッカーデビューを果たされました。ずいぶん早い時期に道を決められましたね。迷いなく送り出されました? JFAアカデミー福島に行くことは本人が決めました。小さい頃からものすごく自我の強い子でした。もともとプロになりたいから、小学校卒業したら家を出てやっていきたいと言っていたんです。それはやはり僕を見てきたというのもあるし、自分で考えて親から離れて自立することがプロへの近道になると思ったのでしょう。実は、その前に6年生でアルゼンチンのボカ・ジュニアーズにスカウトされたけれど、海外でしたので母親が反対して行かなかったんです。福島なら長いキャンプに行くくらいの気持ちで行ったのでしょうね。当時、1期生でしたから想像力も働かなかったと思います。自分のことは自分で決めなさい、というのは僕が自分の父親から同じように言われて育ちました。 それにしても12歳で寮生活、16歳でプロサッカー選手デビューという最年少のサッカーエリートコースに思います。親はどのような心構えが必要でしょう? スペックだけ見ると確かに最年少ですし、どうしたらそうなれるのか?とよく聞かれます。サッカー流・星一徹のような英才スパルタ教育をしてきたのでは?と言われたり。実際はその真逆です。関わらないようにしてきました。究極の自立をしなければそこに到達できない。本にも書きましたが、子どもに失敗させることです。ほとんどの親は頭ではわかっていますが、例えば忘れ物をすると親が届けてしまう。親が、道を平らにしてしまう。そうすることは、子どもから考えることを奪っているのに、親は手を出していることすら無意識だから気づいていない。子どもに何か言う前に、今それを言うべきか考えることが必要です。 では最後に、特にスポーツをしている子を育てる親へ何かアドバイスをお願いします。 日本は世界で一番考えない民族です。便利を追求しすぎて、すべて先回り。人は考えることを奪われてしまった。サッカーの練習メニューすら、なぜそれをするのか?どんな意味があるのか?10歳の子どもですら質問するイギリスと、監督に言われた通り練習メニューをこなす日本。ピッチに出たら、自分で考えて球を回さないとならない。ヨーロッパに勝つには、自分で考えるという意識の違いからですね。例えば、日本の英語教育も今や小・中・高と9年間くらい勉強しても全然話すことができないのは、学習方法がダメだから。読み書きよりも、聞けて話すことが大切です。サッカーができて、英語ができれば、世界で通用しますから。 ---ありがとうございました! 2020年9月リモートによる取材・文/マザール あべみちこ 幸野 健一 書籍紹介
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