三世代で暮らすのは幼少期は良いことも多そうです。料理家のおばあ様とのエピソードは何かありますか? 僕は手を動かすことが好きで、絵を描いたり、何かを作るのが好きでした。3歳頃に祖母からステーキナイフを渡されて「これで野菜を切ってごらん」と。撮影している横で本当に何か切ったりすることに夢中になっていました。親だと子どもに怪我をさせたくない。後片付けが大変だ…と先回りして考えてしまうものでしょうけれど、祖父母だとワンクッション挟むせいか、余裕をもって見守ってくれました。僕は料理教室にも、親子ではなく祖父母とお子さんのペアで参加してほしいと思っています。その方が子どもの力は伸びます。 なるほど。反抗期とか、面倒くさい時期はありませんでしたか? うーん。そもそも僕は祖母と二人暮らしが長かったので反抗のしようがなかった。母は仕事も忙しく飛び回っていましたし、父は転勤が多く単身赴任で不在がちなサラリーマン。ちなみに父方の祖父は杵島隆という著名な写真家でした。祖母からすると難しい時期の男子との生活は大変だったかもしれませんが(笑)。 それでも懐の深いおばあ様がいらしてくださったからこそ今があるわけで。亡くなってから料理家の道へ進まれたこと喜ばれているでしょうね。ところで今、気になるのはどんなニュースですか? ミャンマーの政権事情が心配です。地元の池袋にほど近い高田馬場にはミャンマー料理の店がたくさんあって、その関係でミャンマーの友人も複数います。料理を通じて社会情勢が見えてくる。香港や中国など日本にいると他国への関心が薄くなりがちですが日本だって、いつどうなるかわかりません。できるだけ海外で何が起きているのか、報道をみながら考える機会をもつようにしています。 海外の動向も自分ごととして、「対岸の火事」とか「他山の石」としないことですね。では最後に、これからの時代を乗り切るために必要なマインドとはどんなことだと思われますか? 昨年末の締めくくりに選んだ漢字一文字は「諦」でした。『諦める』という言葉は、後ろ向きな気持ちだけでなく、物事を明らかにするという前向きな意味もあります。コロナ禍となって残念なことも多かったけれど、さまざまなことが日の目を見てあからさまになった。その観念は大切にしながら、自分が今できることをやっていくしかないと思います。僕の場合は料理を通じて、食べることの大切さ、楽しさを伝えていくこと。日々それを続けていこうと思います。 ---ありがとうございました! 2021年4月取材・文/マザール あべみちこ きじまりゅうた 書籍紹介
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