いろいろなご苦労がおありの人生で、複雑な思いを抱えた子ども時代を過ごされて。ご自身のご家庭では、何を大切にされましたか。 できるだけ子どもには自由をあげたいと。やっぱり人間にとって一番大切なことは自由。自由をあげられる親になりたいという思いは一番強いですね。自分は18歳のとき父から自由をもらった。それを、ちゃんと子どもたちに与えたいと思っていました。
でも結局、大した父親じゃなかった。娘からは「お父さん嫌い」と言われたこともあります。すごく大切にしてきたつもりが、言われてハッとしました。娘が生まれたころ、諏訪中央病院の再建も佳境に入っていて、仕事に夢中になっていた。忙しくて家族のことを考えているつもりでも、実際はそうではなかった。 仕事に追われる日々から、家族の大切さに気付かれたというのが、医師としての大きな転換期だったんですね。 結局、人間はひとりでは生きていけない。家族って血はつながっていたほうがいいのかもしれないけど、たとえ血はつながっていなくても、やっぱり家族のような関係が必要だと少しずつはっきりしてきた。でも、思いだけでは相手には通じない。どれだけ同じ時間を過ごしているかも大切なこと。人間はそれぞれが、まだら状にいい面も悪い面も持っていて、そういう完璧でない人間が同じ屋根の下に暮らしてこそ、おもしろかったり難しかったりする。人間は弱いから、弱い間少し支えてあげることは必要。一人ひとりの子どもが自分の人生の主人公で生きていくべきで、主人公として生きていけるようにすることが、家族の役割だと思います。今の家族関係はすごくいい。2009年ベストファーザー賞をもらいました。悪戦苦闘していいお父さんになりました。 遠慮なく本音をぶつけ合えるのも家族で、傷つけ合ってもまた仲直り。
親はいつまでたっても子どもが心配な存在ですよね。 この取り組みを始めた、香川県の中学校校長の竹下和男さんから「お茶はペットボトルで飲むものだ」という子が出てきたと聞いて。お湯を沸かして、茶葉を急須に入れて、湯のみ茶碗に注ぐ……という茶の淹れ方を知らない子がいる。 本を読まない子が増えているのと同じくらい、食についてはちゃんと考える家庭と、そうでない家庭が二分化されています。具体的には、子どもたちが自ら弁当づくりに励むという、すばらしい取り組みですよね。 「弁当の日」には、毎回「旬のものを使う」「冷蔵庫の残り物でつくる」などのテーマがあります。 |
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