バレエと俳優の共通点というのは、表現することでしょうか。あるいはその違いとは?
そう思います。言葉って意味があるので、セリフをいうことは、その人物になりきるということなんだと思います。
今回出演された作品での役どころは主人公の瑠璃子を横恋慕する春夫という名のイケメンで(笑)。役柄になりきれましたか?
いやぁ……僕は、やらないよなぁ……こんなこと(笑)というのはありましたね。
僕は男の浮気心ってしょうがないと思う。設定では春夫には恋人はいますけれど、
瑠璃子のことが本当に好きになってしまう。でも、瑠璃子は……おかしいでしょう?
結婚しているのに他の男と寝てしまうのかな~と。僕はその心情は理解できない。
だったら結婚なんてするなと。女性が男性と共にするというのは、僕はかなり意味があることと思っています。
映画の中では、瑠璃子の夫と瑠璃子と肉体的な関係は描いていませんよね。感情もぶつけられずに、でもお互い波風たてずに暮らしたいというような。
僕はいまだにこの夫婦は疑問です。この関係って、どうなのよって(笑)。
僕の場合は、妻との付き合いが20年ありますが、結婚生活は5年。そろそろ正式に結婚しようと思っていたところに子どもを授かったので、できちゃった婚のようになりましたが一緒に生活している時間が長かったのでいろいろありました。
一緒に生きていくというのは、そういうものだと思いますよ。
結婚に憧れている若い層がこの映画を見ると「えー、なぜ?」と思うようなシーンがあるかもしれませんね。十市さん演じる春夫役のセリフは、書き言葉のようなのにすごくリアリティを感じました。演技の賜物ですか?
いやぁ、難しかったです。台本に書かれたセリフを忠実に言おうとして、監督にこんなふうに言ったら?と提案してもらって、少し動きをつけて言ってみたり。
セリフもそうですが、シーンごとのしぐさの細かいところまで美しかったです。バレエの動きが基礎にあるからでしょうね。
そこを僕は意識して普通にしないといけない、というのがありまして。
砂浜で瑠璃子に手を差し出すシーンでは、監督に「あれはダンサーの動きだったね」と言われました。僕の中では普通に手を出しているんですけどね(笑)。
バレエ仕込みの動きも注目してほしい作品ですね。それでは最後に、子どもを育てるうえで何が一番大切だと思われますか?
親がまっすぐ生きることではないでしょうか。
離れていてもお父さんとお母さんは愛し合っているんだよ、ということをわかってもらうことは大事です。仕事のために離れ離れで暮らしているのはとても寂しいですが、実は仕事をする上でこの環境はありがたかったりもします。
いまだに父親って何だろう?と思うこともありますが、とにかく仕事をしっかりやっていきたいですね。
---ありがとうございました!
スクリーンで見るよりもずっとカッコよくて見惚れてしまいました。
気負わず自然体でお話しされる数々のエピソードは、身を乗り出して思わず聞きたくなる内容ばかりで。場所を問わずジャンプする姿をセルフタイマーで撮影するというご趣味も、失礼ながらバカバカしいほど笑えて人の心をほんわか和ませるものですね。小噺は披露されないお立場のはずが、やっぱり落語風、粋な生き方を継承されているように感じました。
素敵な十市さん、ますますこれからのお仕事から目が離せません!
まずは、たくさんの方に3月公開の映画をご覧いただきたいです!
<了>
取材・文/マザール あべみちこ