瀬川 松子(せがわ まつこ)さん
1977年東京生まれ。お茶の水女子大学大学院博士後期課程に在籍中(専門は社会学ではない)。 瀬川さんは一昨年、昨年と立て続けに本を出版されました。 2冊とも中学受験をテーマにしていますが、全く視点が違うものです。 暴走する親を煽るメディア。メディアの情報を素直に受けてしまうから、 さらに暴走するということでしょうか。 「私立中高一貫校に行けばバラ色。公立は負け組」というアドバイスがあふれていれば、「何が何でも志望校に入らないと」と暴走する親が現れるのも不思議ではありません。中学受験アドバイスは、語り口はやさしいけれど強迫的な内容で、私立をひとくくりに礼賛して公立不信を必要以上に煽るものがほとんどです。でも、本当にそうなのか?そう言っておいた方が都合のいい人たちがそう言っているだけじゃないのか?教育委員会への報告義務のある公立の不祥事が表ざたになりやすいのに比べ、私立の負の情報は報道されにくいという側面があります。 本でも「中学受験のアドバイスの大半に指摘できるのは、それが利害当事者によって担われているということ。言い方を換えると、中立の立場から語られる言葉が、あまりに少ない」と述べられていますね。私立に対して甘く、公立に対して厳しいという瀬川さんのコメントも、共感できました。雑誌媒体では、いいように表現を換えられてしまうのは、そこに大きな利害が絡んでいるからという理由がありそうですね。 雑誌の場合、私だけではなく受験業界のお偉いさんのコメントも掲載されますから、私が言った内容は無難な表現に編集されてしまいます。そこには確かにメディアのからんだ利害の構図がありますよね。1冊目の本は、そういうアドバイスを発信する側の問題に十分に切り込めていませんでした。あれを「親バッシングの本」という人もいるでしょうし、そう読まれても仕方ない面があります。でも、現実には、親バッシングでは済まされない根の深い問題がある。それで2作目は、もっと幅を広げて書けたらと。 中学受験がおかしなくなっているのは親だけの問題でなく、社会的な背景のシステムにあると言及されたのが2冊目なわけですね。 この質問は難しいですね。問題がありまくりなので(笑)。一つ挙げるとすれば、中学受験のアドバイスをする側に、公共性の意識が全くないことでしょうか。忘れられがちなことですが、中学受験は誰にでも可能な選択肢ではありません。現実には、公立中学に進む子どもの方が圧倒的に多いのに、「公立に行くと将来真っ暗」というのは、大半の子どもの将来を全否定しているのと同じです。本当に「公立に行くと将来真っ暗」なら、公立を良くしようと働きかけるのが自然な流れでしょう。そういう素振りも見せず、受験業界の人々が10年近く喜々として公立バッシングを続けてきたのは、公立不信を煽って中学受験を勧めるビジネスモデルが出来上がってしまっているからだと思います。一方で少子化ゆえに生徒集めに必死な一部の私立と業界の癒着の問題もあります。そういう根深い病根のようなものが背景にあって、ただ公立不信を煽るメッセージが発信され続けているのは大問題です。 |
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