将来どういう仕事をしたいとか、大人になったら……の夢はございましたか?
何かしたい、何かしなくちゃならない、何かになるんだという気持ち。普通では終わらないぞという気持ちは持っていました。何かのプロになるはずだと。父は会社大好きなサラリーマンでしたが『手に職をつけろ、何かの専門家になれ』といつも言っていました。
今、お二人とも和楽器演奏家となられましたが、そうなるまでに努力をされてきたことは何でしょう。
ずっとやり続けてきたことですね。途中で他の仕事に変わるということもなかった。
鬼太鼓座(おんでこざ)時代は貧しくて100円のジュースも買えなかった(笑)。
でも、節目節目に支えてくれる人が現れて、人間関係で助けられてきた。それと、ずいぶん長い間、旅をしてきてよかったことがあります。旅はいろんな人に出会い、すぐに別れる時が来る。その短い時間で、いい面だけを見せ合っているわけです。そうすると自然に、いい人になっていく。旅が僕らを強くした。人を信じるという考え方を養ってくれたのかなと思います。苦しい時があっても、もうちょっとがんばろうとその繰り返しできて、がまんした先に道が拓けてきたので。グループ内では二人の絆があったということも大きい。
何百ものコンサートをされてきましたが、コンサートで一番大事にされてきたことって何でしょう。
ステージに立つものの人間力、人柄でしょうか。お客様が観に来るのは音楽を聴きたいという以上の何かです。音楽だけならCDアルバムがあります。技術的にも優れている今、これ以上の音はないというくらいどのアルバムも素晴らしい出来栄えです。
でも、チケットをわざわざ買ってくるのは、あの人の音を聴きたいから。それは音楽という域を超えたものですよね。人間の魅力というのをどうやって付けられるかを僕は鬼太鼓座(おんでこざ)で学んだんです。
僕らは日本の邦楽界や音楽界のどこにも属していない。日本流のしがらみは全然もっていないので、流派の違いなんていうのも全然関係ない。スタジオジブリの映画音楽を全部邦楽器で奏でたらおもしろいんじゃないかというアイデアで作ったアルバムも出しました。
では、これからの子どもたちへメッセージを。
三味線や太鼓、ヴァイオリンを弾いたり、写真を撮ったり……それらは全部同じ世界でつながっている。習い事は別のことではなくて、何でも共通点があるはず。自分に枠をつくってしまうと閉ざされてしまいます。いろんなことをやると、自分でも知らなかった一面が見えてくると思います。
何かひとつ趣味をもつと喜び、豊かさが違います。何でもいいからまったく違う世界へ踏み出すと、きっと素敵なことが待っています。ただ、ひとつ決めたら貫いてほしい。
心の声をしっかり聞いて、自分を信じる力を持ってほしい。
今、コンサートと同時に桜の木を植樹する活動も国内外で行っています。日本は経済先行できてしまいましたが、日本文化と和楽器の素晴らしさを伝えてゆきたい。
---ありがとうございました!
骨太な生き方でありながら、浮遊感のある軽やかな印象。好きな道をとことん極めている人がもつ独特な柔らかさを放つお二人。海外で和楽器を演奏することで、得てこられたのは自分が信じた道を歩いていこう!と決意できる「自信」だったのかもしれません。褒められたり、評価されたりすることで、どんどん力が伸びてゆく。お二人の大切にされてきた「信じる力」こそ、道を拓いていくのに必要なことですね。7月のライブも、楽しみにしています。
<了>
取材・文/マザール あべみちこ