香山 リカ (かやま りか)さん
1960年7月1日北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒。学生時代より雑誌等に寄稿。その後も臨床経験を生かして、各メディアで社会批評、文化批評、書評など幅広く活躍し、現代人の“心の病”について洞察を続けている。専門は精神病理学だが、テレビゲームなどのサブカルチャーにも関心を持つ。
北海道新聞(ふわっとライフ)、中日新聞(香山リカのハート・ナビ)、毎日新聞(ココロの万華鏡)、山陽新聞(時評)、オーディション(スターのココロ)、SFマガジン(SENCE OF REALITY)、アルコムワールド (語学に効く心理学)、月刊日本語(ブックレビュー) 香山先生の著書を何冊か拝読しています。たまたま今、私が体調を崩しているせいもあるのかもしれませんが、元気な頃にはスルーしていた言葉をたくさん見つけられて心に沁みました。折しも3.11に大震災があって今、この国には体調を崩している人が溢れています。この現状をどう感じられますか。 日本はこれまで「努力すれば結果が必ず出る」という成功神話が掲げられて、皆それに向かって進んできました。何でも自分の意思でコントロールし、日進月歩できる。そうできないのは意思が弱いからだ、という無言のプレッシャーもあったように思います。どんな人でも、意外なほど体の状態や調子に支配されていて、感情や思考もそれに伴ってユラユラと変動します。体調が悪い時は休んでいいんです。いい時もあれば、悪い時もある。人は常に一定ではなく、そういうバイオリズムで生きていると思います。不調はあってはいけない、という前提で考えないことも大切です。 香山先生はこれまで不調と、どう付き合って乗り越えてこられたんでしょう? 私はものすごく快調ということも不調というのもなく、ずっと低空飛行で生きているんですね。でも、そういう人がいてもいいんじゃないかと。やらなければならないことはいつも先延ばしにしていますから、いろんな方に迷惑を掛けています。 震災以降、被災地へ向けたボランティア活動をする人が増えています。先日、雑誌で香山先生のコラムに「何もしなくてもいい。今、目の前のことを精一杯こなして生きることで十分だ」という話が載っていました。私も含めて今すぐ被災地へ飛んで行きたくても行けない人は、なんだか罪悪感に駆られて過ごしている。誰かと比較して生きなくていいんだよ、というメッセージを常に発せられていますが、それはとても深い意味があったのだと励まされます。 患者さんの診察をしていても、比較して落ち込んで来られる方が多いんです。例えば主婦のAさんは「私も仕事がしたかった。何も仕事をして対価を得ていない私なんかダメなんだ」という悩み。一方で仕事一筋できたBさんには「仕事はしてきたけれど結婚して子供を育てることがまっとうな生き方だったのでは」という悩み。また仕事も育児もどちらもしているCさんは「どちらも中途半端だ」という悩み。どれが優れているとか、むくわれているということでもない。それぞれ自分が知らぬ間に選んで手にしたもので、悩みが生まれている。今の生活に自分が望んでいるものが詰まっていると考えて、無いモノねだりを再点検することで今を大事にしたほうがいいですよね。 |
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