『TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男』では主人公の高峰譲吉を演じられています。ご存知ない方へ知らせるために一言で表すと、どのような人物でしょう? 高峰博士は化学者としてひとつのモラルをもっていました。人々がより豊かな生活で、より幸せになるために尽くしてきたことがたくさんあった。彼の功績にはよく「無冠 の大使」という言葉が添えられるそうです。日本の地位向上に尽くしたから。研究を産業と結びつけて富を生むことを実証して見せ20世紀初頭の世界をリード。日米親善にも心血を注いだ人物です。 「日本とアメリカの懸け橋」となることを願った私利私欲のない行動はまさに人格者。今回の作品は高峰譲吉の生涯が細かく描かれていますが、役柄に共感された点はどんなところですか? 高峰博士が、あきらめないで挑戦を続けるところですね。僕は役者をやって40歳頃まで全然売れなかった。だから若い頃は、家事も育児も全部やりました。妻にも働いてもらっていましたが、食わせてもらっていた期間が長かった。役者以外の裏方の仕事も結構できちゃうタイプ。自分でもよくわかっているから、これと決めた道は変えなったし、あきらめなかった。そしたら本当に40歳以降になってから役者としてやっと機会に恵まれました。手がけている仕事は違えど、思うように物事が進まなくても高峰博士の心が折れるようなことはなかったのは僕と同じです。 「これまでも何かを成し遂げようとして簡単に成功したことは一度としてありません。TryTryAgain! 何度でも挑戦しよう!」というセリフが何度か出てきますね。しかし今、3.11に起きた東北大震災で日本は打ちのめされています。この映画を被災地へ届けるとしたらどんなメッセージですか? 未来は化学で変えることができる。津波で被災をされた地域、原子炉事故で被ばくをされている地域…と震災によって東北は大きなダメージを受けました。しかし知恵と英知を使って必ずこの国難は乗り越えられる、ということを申し上げたい。化学は人を幸せにする力がある。その逆も然りですが、今はこの大変な事態を変えることができるのは、人が発明する化学の力だと信じたい。 化学の力はもちろん大きいのですが、人を救えるのは、やはり人ではないでしょうか。 そうですね。映画の最後のへんで「化学は人を幸せにするために生まれた。しかし、これからの時代はどうなるでしょう」と高峰博士が疑問を投げかけるシーンがあります。ひょっとしたら将来、間違った方向へ行くような気がすると。しかし今日本を思い、胸を衝くようなメッセージがこの映画にあります。僕はこの人物を演じられてとてもうれしかった。演じたというより、高峰博士からのメッセージを人々に伝えた…という感じです。
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