首藤さんは誰かから言われてバレエを習ったのではなく、自らの意欲で続けてこられたのですね。現在は全国各地から未来のバレエダンサーを目指す男子をご指導されていらっしゃるとか? はい。去年までは男子のみのクラスを行っていました。沖縄から北海道まで約80名が日本各地からバレエ男子が集まり、小1~3、小4~6、中高と3つに分かれてレッスンしました。クラス全員男子で、教えるのも男の先生というシチュエーションは滅多にない経験で、みんな仲間意識が芽生えてとても仲良くなりました。 子どもたちが7日間集中レッスンを受けるだけでもすごいですが、この先伸びる子は見ていてわかりますか? バレエレッスンは通常1時間半。でも小学校の授業は50分ですから、小さな子はせいぜいそのくらいで集中力は途切れてしまいがちで、だんだん疲れて騒いだり、はしゃいだりします。でも伸びる子は目指している姿、佇まいが違う。中学生以上になるとプロを目指すという明確なイメージができている。皆、同じ格好でレッスンをするので、意識の違いがものすごく見えます。 「基礎の大切さ」ということを何度かお聞きしましたが、プロになるためのスキルが、先々プロにならなかった時も生きるものなのですね? はい。たとえプロのバレエダンサーにならなかったとしても、「あの時、先生に言われたのはこういうことだったのか」と思い出してもらえればと。バレエの素晴らしさ、なぜバレエをやるのかを自分自身の感覚でわかってほしい。小さな子には言葉で説明してもわからないこともあります。たとえば「常に…」という言葉を言うと「ツネニってナアニ?」と聞いてきます(笑)。その時は体現して視覚から伝えます。 集中力が切れてしまってうるさくする子に、首藤さんはどんなふうに指導を? 「うるさいぞ!静かにしろ!」と怒鳴りつける人もいますが、僕の場合は黙って静かになるのを待ちます。子どもは動物的な本能で理解します。僕がピアノも止めて、何も言わずに立っていると、自然と静かになるのです。そういう駆け引きも楽しみながらやっています。以前、子どもたちに将来の夢は?と聞いた時に、小さな子どもたちはプロのバレエダンサーだけでなく「踊れる宇宙飛行士」や「踊れる野球選手」など答えもいろいろでした。子どもって言葉ではなく、本能的な力がある。それをダンスにいかしてもらえればと思っています。とにかく基礎が大切。毎日のレッスンを尊重する心を早い時期にもてば、テクニックや色々なことがあとからついてくると思います。
⇒ [3]を読む |
|