首藤さんはこれまでのバレエ人生で、もう辞めちゃいたい!と思うような出来事はありませんでしたか? 本番中にじん帯を切って踊れない時期は苦しかったですね。練習が厳しいから苦しい…と思ったことは一度も無いです。年齢と共に肉体と精神は老化する…というけれど、肉体も精神も死ぬまで進化し続けると、僕は思っています。体型キープが大変ですね…と声を掛けられることもありますが、それは全然大変ではなく、毎日レッスンしていれば保てます。それよりも前へ進むため、進化するための努力が大変です。年々、もっと努力を…という気持ちです。 +αを増やしていくことは自分への挑戦ですよね。そのために日頃から気をつけていらっしゃることはありますか? 自分自身の身体との対話です。生まれた時より年を重ねるたびに親密な関係になっているので、通じ合っている感じがします。最近ほとんど怪我することもなくなりました。心と身体の関係がうまくいっているからです。食事にしても、好きな物を食べます。たくさん食べた時は、たくさん動けばいいですから。 9月末には新国立劇場で新作公演ですね。これまでもたくさんの素晴らしい作品に出演されていますが、今回はまたシェイクスピアの定型詩『ソネット』を現代の視点で読みなおした新作ということで、バレエをあまり観ない人でも堪能できそうです。 シェイクスピアは偉大な作家として多くの言葉を残してきました。この世に存在する絶対的な、愛、生、死といったことを美しい言葉で表現しています。『ソネット』では虚構と現実が折り重なり、登場人物は詩人、青年、ダーク・レディの3人が織りなす愛の葛藤が描かれています。それを現代のダンス語法で読み解く作品で、人間の本質を探究するというバレエダンサーとしての壮大な試み。僕と中村恩恵さんの二人でどのような空間を創り出せるか、楽しみにしてください。 では最後に3.11大震災を踏まえて、これからの子どもたちへ伝えたいことをお願いします。 3.11によって誰もが多くのことを考えさせられたと思います。自然災害の前で僕らは無力です。でも、僕は表現して残していくこと、表現者として社会とつながっていきたい。今やっていることに誠実に取り組むことが未来を培うことなのだと思っています。それは簡単なようで、とても難しいものですが、自分がこれまで続けてきたことをこの先も続け、伝えていきたいです。
---ありがとうございました! <了>
活動インフォメーション
●首藤 康之さん活動情報 2011/2012シーズン ダンス オープニング公演
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