日本がバブル経済の時代に大学生、就職は大手銀行へ。エリートコースを歩まれてこられたのに半年で退職。その後、予備校講師は天職でした? 大学時代はギャンブル、バイト、デート…と勉強以外のことばかりの最低な東大生でした。東大法学部を卒業して民間に就職する時点で、もうエリートではない。バブルの影響は世の中を浮つかせ、踊らせました。そういう雰囲気が好きでなくて、こういう所にいたくないなぁ…という気持ちでした。僕はいつも冷めた皮肉屋なので。退職後は…「空白の3年間」を経て、予備校講師となりました。最初はこの仕事も3年やって辞めようと思ったのですが、3年で借金が無くならなかったから続けました。気がつけば予備校講師となって20年以上になります。 勉強が得意な林さんだからこそ、という気がします。今は子どもを取り巻く環境が変わっていますが人との関係性についてはどう思われますか? 僕はもともと友人が少ないのですが、それでよかったことのほうが多い。本にも書きましたが、仲がいい人なら余計一緒に飲む時間を少なくしたほうがいい。今の子は、興味のある同じテーマを共感してくれる人、自分にとって居心地のいい仲間をネットもあるし簡単に見つけられますよね。でも馴れあいの時間ほど無駄な時間はないと思います。特に男は馴れあい関係で集まれば愚痴や不満ばかり言う動物ですから。 林先生は学校の教育現場ではいらっしゃらないタイプだと思いますが、今の学校に足りない点は何だと思われますか? 僕は関西方面の女子高で12年間教えた経験があります。もちろん、昼間の授業で教師をしていたわけではなく、私学の生き残りをかけて学内に予備校を設置した女子高に、授業後に講師として出講していたんです。その経験を通じて感じたのは、高校の先生は生活指導に時間を割かれ過ぎて学習指導まで手が回っていない。だから、そうしなくていい状況をつくるために家庭が子どものサポートをしないと。普通の学校の先生は、本当にお気の毒だと思うこともしばしばあります。一方で進学校では、生活指導に教員が時間を取られないので、学習指導が一層充実します。 国語の力はすべての学問に通じると思いますが、現代文を教えていらして今の子どもたちに感じることはどんなことですか? 明らかに国語力が落ちています。読書量が減っていること、コピーが氾濫しているのが大きな影響を及ぼしています。僕は自分の手で書き写した時間が長かったことがすごく大きい。文章を書き写すというのは大事。漢字も自然に覚えましたから、その手の問題集は一冊もやった覚えがありません。書けない漢字も読めない漢字もなかった。中学時代に夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、志賀直哉…など作家の全作品を読破していました。それも誰かにやれと言われたことではなくて、自分がそうしたいから読んだのです。ですから生徒には僕が言った通りではなく、自分流にアレンジして考えなさいと言っています。そういうものしか結局身につかない。誰かに言われたことは一瞬頭の片隅に置いても、抜け落ちていく。結局、自分の頭で考えたものしか残らないのです。 ---ありがとうございました! <了> ●林 修さん 書籍情報
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