小島 毅 (こじま つよし)さん 東京大学大学院人文社会系研究科教授。専攻は中国思想史。 中国思想史がご専門ということで、最近の世相を反映してか「論語」は大変注目を浴びています。今日は「論語」の魅力についてじっくりお伺いします。今夏開講の「論語リーダー塾」は5歳から9歳の児童対象です。まだ小さい子どもたちにとって「論語」は親しめる存在ですか? いろいろな考え方があると思いますが、私は「論語」を言葉の面から捉えています。このくらいの年齢の子どもたちは、話の中身はともかく言葉を覚えるものですから。いわば「呪文」のように耳から言葉が入ってくる。その意味で、論語は百人一首と同じです。私も幼稚園の時に父に手ほどきされて百人一首を全部暗記しました。意味は全然わかりませんでしたが…。日本語の響きをまずはからだで覚えて欲しい。母国語の意味を理解してから第二外国語を習得するべきだと思います。そういうわけで、私は英語の早期教育には反対です。 まずは日本語で思考力を身につける必要がありますよね。 テレビで流れている日本語や、メールの用語は、言語としてはまだまだ貧しいと思います。豊かな言葉の「蔵」というものがある。それが古典です。そうしたもののひとつが論語です。これらを丸暗記していくことで、子どもたち一人ひとりの中にも言葉の「蔵」を創る試みです。 子どもたちはどんな授業を受けるのですか? 未就学児童と、就学児童の2つクラスがありますが、5,6歳のクラスは体を動かしながら言葉を覚えます。7歳から9歳については、意味や倫理もひも解いて、彼らの引き出しの一つとして記憶に残るような授業にしたいです。 全12回のプログラムで何かが起きそうですか? 参加する子どもたちの親御さんは熱心な方が多いです。孔子の後継者である孟子について、「孟母三遷の教え」という話が伝わっています。教育には環境が大事だという趣旨で、子どもに良い教育環境を与えようと母親が何度も引っ越しをしたのです。母親が「うちの子は…」と気にするのは、きっと昔も今も同じなのですね。 |
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