小林 弘幸 (こばやし ひろゆき)さん 1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。順天堂大学大学院医学研究科(小児外科)博士課程修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科学講師・助教授を歴任、現在に至る。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にかかわる。 私自身、自律神経が壊れたことがこれまで3度あって先生のご著書を興味深く読ませて頂きました。「あきらめる」健康法…というタイトルがおもしろいですよね。ここに込められている意味をお話し頂けますか? 物事ってへばりつくと疲れる。何かを捨てられれば次へ行ける。頑張ることが美徳と思いこんでしまって、なかなかそういう発想に気づけないものなんです。僕は、前へ進める人は「あきらめる」人だと思う。あきらめたほうが楽になることも多々あります。夢をあきらめない、というのはそれ自体はいいけれど、生きていれば細かな部分あきらめたほうがいいことがあります。例えば、人からよく思われようとしないことも、大事な「あきらめる」ことの一つです。 「これを言ったらなんて思われるだろう?」って他人からの評価が気になって言わずに過ごす人はたくさんいますよね。そういう評価を手放すことが肝心という? 人に何て思われても構わないという人は強いです。人が乱されることは2つしかなくて、人から発される言葉、そして文字です。今の時代だとメールとかインターネット上での言葉ですね。そういうことは関係ないと流して、いちいち反応しない人は強い。反応するのは自分をよく見せたい、よく思われたいという欲求があるから。それを捨てればいいんです。 それは自律神経のバランスを整える上でも大切なことでしょうか? そうです。あきらめないとしがみつくと、自律神経のバランスは崩れます。物事に動じず飄々としていること。周りに惑わされずに我が道を貫ける「武士道」がいいお手本です。一日をどう生きるか。今を生きるということがとても重要。ジェラシーや妬み、嫌みに反応し過ぎないように。暇な人だからこそネガティブな発言があるのですから。 なるほど。本を通じて健康を維持するための最新知識を広められているのですね。 日本は最先端の技術を駆使した医療です。ただ、それだけではなく、健康のために役立つ情報を伝えていくことも医療の大きな役目だと思います。僕が本を書く理由もそこにあります。本を読んで「救われた」と感想を書いた手紙をくれる患者さんもたくさんいます。60万部売れた本は60万人の読者がいるということになります。ですから、本を通じて発信することも立派な医療なのだと感じています。でも、そのためには自分の専門分野を確立して勉強しないとなりません。
|
|