■とても個性的な小学生だったとお察し致しますが、振り返ってみて何か思い出深いエピソードはありますか? 塗り絵やお人形が好きな男の子でしたが、当時バービーちゃんみたいなファッショナブルなお人形が人気で、お年玉を貯めて買いに行きました。でも、髪型と着ている服がミスマッチで気に入らなくて。自分でお人形の服を作って着させたんですね。それを見た母が、「かしてごらんなさいよ。こうするのよ」って立派な服に作り直してくれて(笑)。その時、「男の子が何でこんなものを」と言って取り上げられたら、どんなに傷ついてしまったかと思うんです。
■広瀬さんの好きなことを周りの人に理解されていたことは大きいですね。 そうですね。私は編み物や洋裁が好きでしたが、学校時代にそれで嫌な思いをしたことは全然無かったんですね。むしろ、社会に出てからのほうが「そんな女っぽいことを男がしているのか」というような言われ方をして、腹が立ったことがあります。
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6年生の遠足にて。 当時から女子メンバーと仲良くできる 男の子だった。座り方も、とてもお行儀よい |
親戚のお兄さんたちと、やんちゃそうな 女の子は3つ下の妹さん |
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■まだまだ社会の認識が低いのでしょうね。ところで妹さんの結婚式にドレスを編んだとお聞きしましたが。 はい。2年掛かりで仕上げました。レース編みや平編みや色々な模様を組み合わせた力作でした。でも、妹がその後、バザーに出してしまって人手に渡ってしまいましたが。それでも、写真を撮っておいたので、記憶をたどってコピーを創って、今も展示会などには出品していますよ。
■え、もう一度同じドレスを編まれたのですか!!ますますスゴイ…。編み物は何歳くらいからできるものでしょうか。 小学2~3年生でしょうか。興味がある子はもっと早くてもできると思います。今、月の前半は講義で全国を行脚していますが、男の子で器用な子が結構います。編み物は一目づつ積み重ねないと出来上がりませんし、手づくりの良さを実感できると思います。今の子どもは、ゲームとかテレビとか何でも受け身が多いでしょう。でも、編み物は目に見えて出来上がっていくし、完成度にどんどん近づいていくんですよ。その達成感もぜひ味わってほしいですね。
----今日は本当にありがとうございました。
広瀬さんのお話を聞いて、心がポカポカ暖かくなりました。ものを創る人は、純粋に好きなことをコツコツ積み重ねていますが、広瀬さんは物腰は柔らかでも、気骨のある男らしい判断力でどんどん運命を切り拓いてこられたのだと感じました。私も昔の毛糸をだして、もう一度編み物をやってみようかな~と思った次第です。親子で一緒にやってみたら、案外、息子のほうが上手かったりして……。
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<了>
取材・文/マザール あべみちこ |
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『モードとしての編み物展』 10月3日(火)~10月8日(日)
日本橋三越新館7階ギャラリーにて。 広瀬先生の編まれた数々の名作をご覧いただけます。 |
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